君が居る今、私の知らない過去
□君のための俺の地位
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有紗は首を傾げた。意外だった。
意外ではあるが、フィディオには全く女性経験がなかった。寄ってくる女はそれこそ比喩でも何でもなく際限なくいたが、一度だって目を向けた事はない。本当に、一度だってだ。
さすがに女に関心が無さ過ぎると心配になった有紗を知らないユースのチームメイトが女性を紹介したりしたが、フィディオにとっては有紗以外同じ生物だ。
「有紗以外に全く欲情しない。有紗の言葉なら“おやすみ”って言葉だけでイけるんだけどね」
と言いのけられ、泣いた女は何人いただろうか。
そんな事を当たり前のように言うフィディオにとって、有紗としたキスは既に昇天してもおかしくなかった。
ファーストキスを愛する有紗とできた事はフィディオにとって目を潤ませるのに十分な理由だった。
「何で、初めてって、フィディオならいくらだって可愛い子がいたでしょ?」
「?」
有紗の問いに、何を言ってるのか分からないと首を傾げる。彼の目には自分がどういうふうに見えているのか分からない有紗もまた首を傾げる。