君が居る今、私の知らない過去
□ずっとそばに
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「フィ、ディオ、…開けてよ、ねぇ、居るんでしょ?…っ助けて…開けてっ、いやだよ!」
フィディオは有紗を、彼女の為に用意した部屋に運び鍵を閉めた。これこそ日中業者が入って取り付けた物だ。
別に今まで過ごしてきた広々とした部屋に何を恐怖するのか、と思うかも知れない。
しかし今さっき感じたフィディオへの恐怖心が、密室に閉じこめられた状態を酷く煽る。
有紗は涙を流しながらビクともしない扉の前にペタンと座りこんだ。力が入らず、扉を殴ることも蹴ることも出来ず弱く手のひらで扉を押していた。
「いやぁ……怖い、怖いよフィディオ、怖い…お願い、居るんでしょ?フィディオ?」
助けを求められたフィディオはうっとりと頬を染めて有紗が触れている扉を外側から同じように押した。
今彼は優越感で満たされていた。愛しい彼女が自分を求めている。
「……有紗」
「! フィディオ!フィディオ、お願い、出して…気が狂いそうだよ」
「あはは、じゃあ俺と同じだね。俺も有紗が好きすぎて気が狂いそうなんだ」
「っ」