Tellus
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泣き疲れた瞳子はしゃくり声を出しながら琴恵を見上げ、赤い目で彼女を見つめた。
「…お母さん。またお母さんになってくれるの?」
「瞳子がまたお母さんでいいって言ってくれたらね」
自分が16歳である事を忘れて昔のような口調で微笑みながら瞳子の目尻に溜まった涙を拭う。
「…お母さんはお母さんだもの。お母さんじゃなきゃ嫌よ」
こうして私はまた吉良星二郎さんの妻、瞳子の母に、そして施設の子供達の母になりました。
両親はいきなりの結婚に驚き、前の妻を知る人は星二郎を非難した。前の妻に似た顔の若い女を娶った。と。一部は前の琴恵の人格を認めてくれていたが故のものもあったが。
責められても星二郎は笑った。瞳子は少し不機嫌だった。
ちなみに琴恵が前の琴恵だとほぼ確信した運転手本匠川も、不機嫌だった。
ヒロトと自分の死について聞いた琴恵は、一瞬悲しげに眉を寄せてから星二郎同様笑った。けれど怒りはしなかった。
「そう…隠蔽されましたか」
「すみません琴恵」
「星二郎さんが謝る必要ありませんよ」