Tellus
□5
2ページ/5ページ
「っお母さん、ヒロトには会った?」
空気を変えるように瞳子が声をはる。琴恵はその質問に答えるため、瞳子にむいた。
「うん。……そっくりだったね」
「お兄ちゃんとそっくりなのに年下で戸惑ったけど、お母さんみたいにお兄ちゃんになるかも…!」
期待に満ちた目の色の瞳子の言葉を聞いてから、星二郎を見る。同じ期待に満ちた瞳だ。
無理も無い。もし彼が吉良ヒロトの人格を持ったら、家族がまた揃う事になる。期待してしまうのだろう。
琴恵は目を細めた。
「そうね、そうかもしれない。でも、今は“ヒロト”じゃない。“基山ヒロト”だよ」
「……」
「星二郎さん、きっとこの体が私じゃなかったころにあなたに“琴恵”と呼ばれたらその体の彼女は不愉快だろうし、私も違う女性に琴恵と呼びかけられたら、悲しいです」
「…琴恵」
琴恵は瞳子の頭を撫でる。
「ヒロトはヒロトよ。どちらもね」