Tellus


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琴恵は頭が良かった。といっても3度目の人生なのだからそれに見合う学力と知恵だ。

そして何より、琴恵は自分の分をわきまえた。夫が他界し2年会長という吉良財閥を統べる地位になろうとも決しておごりはしなかったし、夫の秘書であった研崎竜一に仕事を任せ、最終決定だけを行った。滞りなく吉良財閥はその力を維持した。





しかし、年月が過ぎるごとに琴恵の体はどんどん弱っていった。



「次の製薬会社ですが、あまり成績が伸びません」


ゴホッ ゴホッ


「次の援助で結果がないようなら契約内容に奥様も少し口を出して…」


ごほごほっ ゲホッ


「…口を…………大丈夫ですか奥様」



「ケホッ フッ 大丈夫です。すみません」


「………いえ、奥様が平気なら構いません」



頬がこけ、顔色も悪い研崎は少しだけため息を吐きながら頭を下げて退室した。見た目だけなら彼の方がずっと病人だ。

襖が閉まるのを確認してから琴恵もため息を吐いた。



「ゴホゴホッゲホッ ケハッ」



ハンカチを口に当て我慢したぶん、思い切り咳をする。


 
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