Tellus
□9
1ページ/4ページ
「母さん」
「ヒロト!?何で…っダメッ!伝染っちゃう!」
入室してきたヒロトに、琴恵は意味がないと知りながら口を両手で覆った。
感染病にはそんな行動意味がない。ヒロトや研究員は琴恵の疾患がすでに完治していることを知っているのだ、意味はない。
ヒロトはにっこりと笑って琴恵のベッドに座った。腰を捻るように母を振り返る。
「母さん、俺なら大丈夫だよ」
「…大丈夫って?」
ビクビクと口から手を離してビクビクとしながら首を傾げる母に、ヒロトは目を細めた。この母が堪らなく可愛らしい。
「俺、ここの研究所で作られた治験薬で抗体が出来たんだ」
「っどうして治験薬なんて!」
あなた達子供達はそんな事しなくていい!と声を荒げると、ゴホッと強い咳が出た。続いてケホケホと空咳が続く。
琴恵の疾患は完治しているが、本人に完治を知られる訳には行かない。
中毒になっている彼女が死なない程度、危険がない程度に石の力を切っている。そうすれば完治した疾患とは別に中毒症状が現れるのだ。