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□瞳ノ向コウ
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その姿に見とれて
操られるように
体が動く


無意識な動作。
気が付けば僕は彼女を見ていた。綺麗なフランス人形のような横顔。長い睫毛。窓から差し込む光で、東洋人独特の漆黒の髪は少し茶色帯びて見える。彼女は一体、何処を見つめているのだろう。視線を追ってもその先には何もない。ただ、雲一つない見事な空が広がっているだけだった。

何を見ているのか。
問い掛けたい。気になるのは単なる僕の好奇心。もしかしたら、僕が見えないだけで、彼女の瞳にはしっかりと見えているのかもしれない。それは今までに見た事のない素敵な景色かもしれない。気になる。だが、話しかけられないのが現状。勇気のない哀れな僕を笑ってやってくれ。

目が合った。
ドクン、心臓がこれでもかというくらいに跳ね上がる。彼女の瞳が僕を金縛りのように動けなくする。動く唇。何を話しているの?聞こえない。心音ばかりが耳に入ってくる。うるさいうるさい。

カツン、
それは彼女の足が地面を歩く度に鳴るヒールの音。徐々に近づく。僕に近づく。彼女の瞳は何もかもを見透かしたような瞳をしていた。






(心音がうるさい)






10.02.25

END.

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