魔律短編夢
□背くらべ
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「あっ!!」
いきなり頭が涼しくなり、視界が開けた。
原因はすぐにわかった。誰かがボクの帽子を取ったんだ。
後ろを勢い良く振り返ると、ボクの親友がとんがり帽子片手に立っていた。もちろん彼女が手にしていた帽子はボクのものだ。
「返してっ!」
「ビコ、だめだよこんなのしてちゃあ」
彼女は帽子をくるくると回し、笑った。
「何でだめなのさ?」
「あたしの身長が小さく見えてしまう!」
「…………ぷ」
意外な返答に思わず噴き出してしまった。
「あーっ、笑ったなあ!」
「だ、だって……あははは」
「深刻な問題なのッ!」
……人前で滅多に笑わないボクだけど、彼女といると自然に笑みが零れてしまう。それほどボクにとって彼女の存在は特別、なのかな。
「いい加減馴れたら?ボクはとうの昔に克服したよ」
「むー……あと10年はかかりそう……ってあたしはまだ伸びるの!成長期成長期!!」
またボクは笑った。彼女は軽くボクの頭を叩いた。
「……あたしもビコみたいにとんがり帽子被ったら身長高く見えるかなぁ」
「さぁ。無理だと思うよ」
「きっと高く見えるさ!ってコトでこの帽子、一日借りまーす!」
そう言うなりダッシュで彼女は教室から出て行った。
「ちょっと、待ってよ!」
ボクは慌てて彼女の後を追い掛けた。
背くらべ
(これで今度の身体測定はあたしの勝ちだね!)(……や、帽子取られると思う)
End.
魔律短編夢/どり〜む/ふる〜つ村。