魔律短編夢
□背くらべ
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じーっと見つめてくる彼女。
机に突っ伏し、寝たフリをする。
それでも彼女はじーっと見つめる。
「……んだヨ」
とうとう我慢が出来なくなり、オレはムクリと起き上がっていかにも迷惑そうに言った。
『ムヒョってよく“照れ隠し”するよね』
先日言われたビコの言葉をふと思い出す。
照れ隠しじゃなくて本当に迷惑なんだ。彼女に見つめられると何故か気になって気になって寝ようにも寝れない。
──そう思っている一方で、見つめられて満更じゃない自分がいる。
彼女がいるとどうも調子が狂う。やはり迷惑だ。いや、でも──
「ちょっとムヒョ立って」
彼女の言葉によって、オレの意識は現実に引き戻された。
「……は?」
「いいからいいから」
彼女はそう笑って言ってオレの腕を掴み、床に立たせる。
「寝癖は無しね!」
「??」
オレが彼女の言葉の意味を理解しようとしていると、彼女はオレの頭に手を乗せた。当然、オレは彼女のいきなりの行動に驚いて後退りする。
「ちょっとムヒョ、動いちゃだめ!」
ぐい、と彼女はオレを引っ張り返した。これもいきなりの彼女の行動。それにまたもや反応出来なかったオレはバランスを崩し、彼女の身体に倒れ込んでしまった。
「もう、ムヒョったら!しゃきっと立ってしゃきっと!」
……オレの心臓はこんなにもうるさく鳴っているというのに、こいつは先程の出来事を気にも留めていない。
「……えーと……」
彼女は最初にやった時と同じようにオレの頭の上に手を置いた(さっきより顔が近くなってるのは気のせいだろうか)。そしてそのままオレの頭上の手を彼女自身の方へ水平にずらした。──そう、まるで背くらべをしているかのような──
「って何やってんだ!」
「やった!あたしのがちょびっと高い!」
「高くねェヨ!さっきの手ェ少し下にずらしただろ!」
「ずらしてないよ!ちゃーんと水平に……」
「オレのが高いはずなんだヨ!」
「それは寝癖入れてるからでしょー!ムヒョの寝癖入れなかったらあたしのが高いもん!」
「入れても入れなくてもテメェのがチビだ!!」
「なっ、ムヒョのがチビのくせにー!!」
背くらべ
(今度の身体測定の時、勝負だからね!)(フン、望むところだ)
End.