ボンゴレ島物語

□4、春喜祭
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何かを育てるということがハルは楽しくて仕方がない。
早起きにも慣れて来た頃。
午前中に一通りの作業を終えたハルは、昼食を取るために町に出ていた。
この島唯一の食事処であり宿屋であり酒場であるクロームの勤める店『コクヨウ』の食事はおいしい。
数日に一度、ハルは昼食を『コクヨウ』で取ることにしている。
毎日働いているのだから、たまには楽してもいいだろう、というツナヨシの提案からだ。
「食事の前にお届けをしなくては」
ハルの作った野菜の評判は少しだが良い方向に上がっているらしく、時折、買いたいと注文が入るのだ。
今日は、リョウヘイに頼まれていたものを手にしている。
採れたての野菜を大切に抱えて教会へ向かうとリョウヘイは庭で作業をしていた。
花が沢山並べられているが、花壇用とも室内用とも違う。
なんだろう、と首を傾げていると作業を一区切り終えたリョウヘイが立ち上がり固まった身体をほぐすような運動をし始めた。
その際にハルが視界に入ったらしく、にかっと人好きのする笑顔を浮かべた。
「お。ハルではないか」
「こんにちは。お野菜届けに来ました!」
「悪いな。ほれ代金だ」
「ありがとうございます・・・あれ?多いですよ」
間違えたのだろう、と代金を返そうとしたが、リョウヘイはそれを拒んだ。
そのままそっとハルに握らせ優しく瞳を細める。
それは神父らしくなりリョウヘイの神父らしい表情だ。
「気持ちだ。美味い野菜をありがとうな!」
初めて注文を受けたときもだが、こうして美味しいと言ってもらえるのは嬉しい。
心が浮きだって嬉しくなり、がんばろうという気になる。
「これからも期待してるぞ」
「はい!これからもよろしくお願いします!!」
嬉しさに満たされた笑顔を浮かべるとハルはスキップをし、鼻歌を歌いながら教会を立ち去った。
来たときの疑問をすっかり忘れて。
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