ボンゴレ島物語

□10、愛の花
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夜、『コクヨウ』が酒場に姿を変える時刻にクロームは、そっと店内を見回した。
ムクロは接客に忙しく、一緒に店を切り盛りするケンとチクサもそれぞれせわしく動き回っている。
それでも用心してムクロが奥の席、クロームが身を潜める裏口側が見えない位置に移動したのを確認してから音を立てず外に出た。
クロームがここまで警戒して外に出るのはわけがある。
ムクロはクロームを溺愛しており少しでも男の影がちらつけば調べ上げてその相手に脅しをかけてしまうという始末。
昔は大切にされているのだと嬉しかった。
内容はまああれだが。
だが、今回はそんなことにならないように注意してきたのだ。
ムクロは好きだ。
だが、それ以上にかけがえのない、愛おしい人が出来た今ムクロの行動で傷つけたくない。
事情を知っている彼は「気にするな」と言うけれどクロームがそれを許すことが出来ない。
それを伝えれば彼は仕方なさそうに、そしてたぶん彼が敬愛する人にも見せない優しい微笑を浮かべてくれた。
そんな彼が夜に会おうと言ったのは昼間。
彼との折角の時間を潰されないためにクロームは、細心の注意を払ったのだ。
去年、誕生日に貰った腕時計を見れば約束の時間を少し過ぎている。
慌てて約束の場所に行けば彼は真っ直ぐに海を眺めていた。
月明かりに銀の髪がきらきら輝く。
(・・・きれい・・・)
初めて彼と出会ったのもこんな月夜だったのを思い出していると彼が振り向いた。
「クローム」
「遅れて、ごめんなさい」
「一、二分だろ気にするほどじゃねぇ」
クロームが謝れば彼は苦笑する。
お前、気にしすぎなんだよ、と言う彼に鼓動が跳ねた。
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