ボンゴレ島物語

□14、幻影の世界
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ふつりと途切れた意識が浮上する。
目覚めたハルは知らない場所にいた。
緑だけの世界。
建物も人もいない場所。
(はひ・・・ここはどこでしょう?)
首を傾げたつもりだったのに捻る際の感覚がどこにもなく、ハル自身がどこかふわふわしている感じがする。
今、何が起きてどうなっているのか確かめる術はないためにハルは、うんうんと唸りながら考え。
(女は度胸です!)
進むことを決めたが、やはりいつものように拳を握ったはずなのに指が掌に当たる感触も力を入れて腕の筋肉が動くはずなのに、その動きも感じ取られなかった。
ふわりと前へと進み出す。
まるで雲の上を浮いているようだ、と思いながら突き進めば青が広がった。
後ろを見れば緑。
前を見れば青。
辺りには何もなくて考え付く答えは一つ。
(こ、孤島ですか!?)
置き去りにされました、と混乱していたハルの側に彼女は降り立った。
「あらあら、可愛らしい子です」
上質な布で出来た衣装を纏い、艶やかな黒髪は腰以上の長さ、黒の瞳は優しい光りを灯している。
若くはなっているがあまり変わらない姿。
ハルとそっくりな女性がそこにいた。
(お母さん!?)
驚くハルに女は微笑む。
「ここは過去であり過去になき場所。言わば幻影とも言える世界です」
なので。
「私は、あなたの母であり母になき者ですよ」
(???)
女は意味がわからないハルへと手を伸ばすとその綺麗な手にハルを乗せた。
そう乗せたのだ。
女が物語の巨人のように大きいわけではない。
周りと比較しても極普通だ。
大事そうにハルを包むと女は海辺に寄った。
「ハル・・・今あなたがいる場所は全ての始まりの時代」
そっと女の手が退いて、ハルが海面に映る。
「まだ、何もない、私が大神の命を受け降り立った時代なのです」
(は、はひーっ!!)
女が言い切ったのと同時にハルは叫んでいた。
女が言った言葉にもだが、自分の今の姿にも驚いたのだ。
海面に映るはずの黒髪の少女はいない。
代わりにいたのはふわふわと宙を漂う小さな光りだった。
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