ボンゴレ島物語

□5、新たな出会い
2ページ/8ページ

『ああ、ハル。元気にしてるかい?』
電話の主は牧場をいきなりハルに任せた父ジョットだ。
母ダニエラの声も聞こえるから隣にいるのだろう。
「お父さん!今、どこにいるんですか!?」
『今は砂漠だよ。ピラミッドの謎に迫ってる途中なんだ』
常々思っていたがこの父の本業はいったい何なのだろうか。
幼い頃は漁師だったし、いつぞやは美容師だった。
ハルの記憶にある限りでは五つ以上の職業をしていた気がする。
しかもそれら全てが成功しているのだから末恐ろしい話しだ。
そんな父を凄いと思うが、一番凄いのは、その無茶苦茶な父と結婚した母だと思う。
転職を繰り返す彼と長く一緒にいられる時点で尊敬ものだ。
馴れ初めを聞いたときダニエラは言った。
「自由にしてくれたんですよ」
と。
それ以上は何も聞けなかったしダニエラが幸せそうだったからそれだけでハルは満足した。
いろいろ不思議なことがあるのだが聞いたこともないし、気にしたこともない。
例えば、祖父母にあったことがないこと。
イトコという存在も知らない。
二人の故郷も。
「良く考えたら不思議だらけです」
何故、急に気になったのか。
きっと今電話をかけてきたジョットのせいだ、と責任をなすりつける。
『何が不思議なんだい?』
「お父さんとお母さんのことですよ。ハルにはイトコいるんですか?おばあちゃんは?おじいちゃんは?お二人の故郷はどこですか?」
受話器越しに微かに息を飲む声が聞こえた。
聞いてはいけないことを聞いたのだろうか。
言わなかったのか・・・と小さな声が聞こえた。
それは辛いとか悲しいとかそんな感情ではなく、なんというか悪戯されてぐったりとしている感じだ。
母が、私達の問題でしょう、とやんわりたしなめる声も聞こえた。
『ハル、その話しはおいおいしてあげよう。電話でね』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ