ボンゴレ島物語

□6、夏到来
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今年もこの時期が来たな〜とツナヨシは生ぬるい目をしていた。
羊の毛がうっとおしい時期だ。
立っているだけで体力を奪われる時期だけに動物の相手には他の季節よりも倍の体力がいる。
まあ天気は毎日が晴れなので放牧には持って来いの時期なのだが。
「ツッく〜ん!ハルちゃんから電話よぉ」
動物を外に出し終えたタイミングでナナが家の窓から身を乗り出し叫んだ。
「父さん、少し抜ける」
「ん?おお」
イエミツに一声かけるとツナヨシは家に戻った。
「もしもし、ハル?」
『ツナさ〜ん!!』
電話に出ると今にも泣き出しそうな声が聞こえた。
「ハル!?どうした!?」
『うぅ・・・野菜が』
「野菜が?」
『全部枯れちゃいましたぁ』
ハルの言葉にツナヨシは、ほっとする。
もっと大変なことが起きたのかと思ったのだ。
「ハル、落ち着いて」
『落ち着けませんよ・・・あんなに大事に育てて来たのに』
「うん、手塩にかけた作物が枯れるのは悲しいよ。だけど時期っていうのがあるから仕方ないんだよ」
落ち着かせるように優しく声をかける。
『じき?』
「そう。春には春の。夏には夏の。季節によって作物は実る時期が違うんだ。もう夏に入ったから夏の野菜を植えないといけないんだ」
『そうだったんですかぁ』
「説明不足でごめん。今日の午後から出かけられる?種を見に行こうか」
自然に誘っているように聞こえるだろうか。
実は毎回ハルを何かに誘うのに緊張しているのだ。
断られるだろうかと不安にもなる。
『いいんですか!?』
「うん」
『楽しみです。クロームちゃんのとこ新しいデザートが出てるんですよ。帰りに食べましょう!』
先ほどまでの悲しげな声が嘘のように明るい声が響く。
そのことと誘いが断られなかった事に安堵してツナヨシは一人笑みを浮かべた。
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