捧げた物語

□強い人
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楽しそうにくるくると表情を変えて話すハル。
見ていてあきはしないが、腕を絡めてくるのは正直うざい。
「それですね。友達が、誰か紹介するからって言うんです。ですから、ハルは、ツナさんの奥さんになるので別にいりませんって答えたんですよ!」
誇らしげにハルは言う。
これに綱吉は、ますますイラついた。
ハルは、綱吉の想いを無視して彼の妻は自分だと豪語する。
好きだと言ってくれるのは嬉しい。
だが、将来をこうだと決め付けられるのは嫌いだ。
修行の疲れもあって綱吉のイライラは限界に来ていた。
勢い任せにハルを壁へと追い込み、顔を近づける。
不機嫌の色を隠さずに琥珀の瞳を細めハルを見た。
「ねえ、ハル」
「はい?」
「俺は、優しくない。そもそもハルを妻にするなんて考えてない」
誰もが凍りつくであろう冷たい声。
実質、視界の隅にいる隼人と武は青ざめて固まっている。
だが、目前の彼女はというと大きな黒の瞳を瞬かせたあと納得したように手を叩いた。
「ハルもツナさんもまだ中学生ですから、発言は気をつけないといけませんね。うかつでした。では、恋人ということでいいですよね!」
にこりと満面の笑みを浮かべるハルに綱吉は眩暈を覚える。
実は、今日のようなことは何度もあったのだ。
突放すように冷たく何度も言ったのに彼女は、気にしていないというか、気付いていない。
天然なためか、それともかなり鈍いのか・・・たぶん両方だろうと思われる。
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