Novel

□Partner
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「ボリス、次の任務はどんな内容か教えてよねー。」
助手席で煙草を吹かしているボリスに向かって、コプチェフは不満げな声で話しかける。ボリスは煙を盛大にコプチェフへ吹きかけた。
「げほっげっほ!げほっ」
いくら自分も煙草を吸うとしても、これは煙たい。コプチェフは思わず咳き込んだ。
「げほっ…何なんだよ!」
「うるせえ。てめえは運転さえしときゃいいんだよ。」
「…もー…。」
ある程度予想はしていたが、やっぱり納得がいかない。
ちらりと恨めしげな瞳で、コプチェフはボリスを見る。
ボリスは何事もなかったかのように、煙草を燻らせていた。

コプチェフとボリスが組んで任務にあたることは、これで3回目だ。任務内容は3回とも逃走中の犯人を、確保すること。その際は生死は問わないということだった。そのような任務内容がボリスに送られてくる。
コプチェフはボリスに指図されつつ車を走らせているのだが、何せボリスにのみ情報がいっている状況。自分が追いかけている犯人がどんな奴なのかあまり分かっていない。その犯人の背景にある情報を知る権利は少なからずあると思い、コプチェフは3回目の今日に申し出でみたのだ。
そしたら案の定、あっさり断られた。何で断られるのかは分からないのだが、一匹狼を地でいっているボリスには何を提案しても無駄な気がしていたのだ。
「情報ぐらい、教えてくれたっていいじゃん。」
無駄とは分かってはいるものの、またごねてみる。ちらりとボリスを盗み見みると、ボリスは意外にもこちらをじっと見ていた。
その予想外の瞳の鋭さに、コプチェフは目をそらすことができない。
「…後で教えてやる。」
「え…?」
「そんなに聞きたきゃ教えてやる、犯人の情報。」
「本当!?」
「その代わり…犯人に感情移入するとか、訳わかんねえことになるなよ。」
コプチェフはボリスが言っている意味が分からなかった。
何だって見ず知らずの犯人に 感情移入するなんてことがあるのだろう。コプチェフはボリスの気の変化についていけず、きょとんとした顔をしてしまう。
「昔感情移入して、馬鹿な選択したあほがいるんだよ。」
ボリスは苦い顔をして ほとんど灰になった煙草をつぶした。
「馬鹿な選択…?」
「…いいーからっ早く行けっ!」
「は…はいっ」
コプチェフはボリスからいきなり頭をはたかれ、アクセルを深く踏む。
ボリスの機嫌や感情は本当に読めない。どうやら先程のことは地雷だったようだ。
自分に初めてパートナーという存在ができ、少しでも相手のことを知りたいと思ったのだが…。このボリスが相手となると、中々難しいようだ。
コプチェフはボリスにばれないように ため息を吐いた。
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