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□四畳半の隙間
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※現パロで、留三郎・文次郎が大学生入学頃(18〜19歳頃)という設定。

※文次郎、留三郎に忍たま時の記憶はありません。

※5、6年も登場。伊作との絡みもあります



『四畳半の隙間』



文次郎は元々、大学に行く気はなかった。
高校が進学校であったことと、親がやや学歴を重んじる性質なためか、気付けば当たり前に周囲と同じく受験勉強をし、いわゆる受験戦争にももまれた。
勉強にそこまで苦痛を感じないが、やはり高校受験の時ほど楽ではなかった。


文次郎の進学先は、実家とは離れた場所。
もちろんのこと、一人暮らしをする必要があり、文次郎は進学先からバスを使って十五分程離れたアパートを借りることにした。
周囲には寂れた商店街と最近になってようやく建てられたであろうコンビニがぽつりと。

三日前に引越してきたばかりで、周囲のことはまだよく知らないが、探索をする必要を感じない。

文次郎は今日で三つ目の段ボールをあける。
中には数冊の本。
ためになるか分からない教科書と、辞書がきちんと箱の中に収まっている。
この四畳半のアパートに、段ボールがあるのは邪魔でしかたがない。

ふと、文次郎は窓からの風を感じて本を取り出す手を止める。

「…風通しはいいのか。」

四畳半。
家賃三万円。
築十五年。
今では珍しくなりつつある畳部屋。

安さを重視してあたった物件で、住みやすさにはほとんど期待はしていなかった。
しかしここの階−五階の窓から見える景色と、風通しは良いと感じていた。
やや大きめな窓から、文次郎は外を見る。
誰も立ち寄りそうにない鬱蒼とした野原と、小さな公園が存在していた。
この狭い部屋に、家族で住むことはまず不可能だろう。
子どもがつかうあの公園のブランコやすべりだいは、この場所では何の役にも立たない。

文次郎がぼんやりと、錆び付いた揺れないブランコを見ていると、ひとりの男性がふらりと窓枠の景色に侵入してきた。
アパートの裏側にあたるせいか、この景色に人が歩いているのはほとんど見ない。
裏道はあるがそこまでの利便性もなく、時に犬を散歩させる近所の住人が、通過する程度。
公園に向かう人も見ないし、ましてや公園を利用する人なんて皆無だろうと文次郎は決め付けていた。

突然現れたのは若い男性のようだが、まさにその公園に向かっている。
連れはいないが、その横には何と猫が歩いていた。
ゆったりとしたジーンズに、濃紺のΤシャツ。
年はもしかしたら、自分と同じくらいかもしれない。



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