道化師と堕ちた天

□@
3ページ/4ページ



「……………どう言う事じゃ……。説明しんしゃい」



突然の申し出に酷く困惑しながらも、仁王は努めて落ち着いた声で先を促した。



「クーちゃん…、最近全然楽しそうやない。いっつもぼーっとしよるし、笑ってくれへんのや……」

「………………」

「……クーちゃんっ、…イジメられとんねん――」



眉をしかめながら耳を傾けていた仁王は、あまりの驚きに目を見開いた。



「あいつがか………!?」



思わず大きい声を出す。



「おまん、俺相手にからかっとるんじゃなかろうな?」

[ちゃう!ホンマにクーちゃん苦しんどるんやッ]

「……なんかの間違いじゃないんか?」

[間違わんっ]



訝し気に問うと間髪入れずに返って来る大きな声。
その剣幕に、仁王は目を閉じて深く息をつくと、詳しく話すように促した。





[ウチもよう分からんねん。…クーちゃん何も話てくれへんし……。けど、クーちゃん嵌めたんは美並唯花っちゅー転校生や]

「ミナミユイカ……」

[うん。今は男テニの臨時マネージャーしとるってクラスの男テニの奴が言っとったよ]



友香里の言葉に仁王は黙って眉をしかめた。



(部員は懐柔されたか……)



「いつからそんな事になっとるんじゃ」

[夏休み明けてホンマに直ぐやったと思う。いつの間にか皆がクーちゃん悪う言う様になって……]



そこまで言って友香里は悔しそうに言葉を切った。
表情こそ見えないが、付き合いの長い仁王には、彼女が今どういう表情を浮かべているか容易に想像出来た。



「おまんのせいじゃないきに…。それよか、お前は大丈夫なんか?妹っていう理由で蔑まれたりしとらんか?」

[ウチは大丈夫。学校ではクーちゃんに言われてクーちゃんとは一切口きいとらんし…。友達がいっつも一緒に居ってくれとるから……]

「さよか」

[ただな…]

「……ん…?」

[たまになんやけどな…、『あんなろくでもない奴が兄貴で可哀相やなー、自分も』っちゅーような事を言われるねん…]



反論したくても自分の事で何言われても言い返すな、言われとるし……。と、友香里は苦虫をかみつぶしたような声を出す。
不愉快さに顔をしかめながら、仁王も内心で悪態をついた。





(はっきりせん事が多過ぎる。…じゃけど、ほっといても解決はしんそうにないな…………)






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ