道化師と堕ちた天
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「……………どう言う事じゃ……。説明しんしゃい」
突然の申し出に酷く困惑しながらも、仁王は努めて落ち着いた声で先を促した。
「クーちゃん…、最近全然楽しそうやない。いっつもぼーっとしよるし、笑ってくれへんのや……」
「………………」
「……クーちゃんっ、…イジメられとんねん――」
眉をしかめながら耳を傾けていた仁王は、あまりの驚きに目を見開いた。
「あいつがか………!?」
思わず大きい声を出す。
「おまん、俺相手にからかっとるんじゃなかろうな?」
[ちゃう!ホンマにクーちゃん苦しんどるんやッ]
「……なんかの間違いじゃないんか?」
[間違わんっ]
訝し気に問うと間髪入れずに返って来る大きな声。
その剣幕に、仁王は目を閉じて深く息をつくと、詳しく話すように促した。
[ウチもよう分からんねん。…クーちゃん何も話てくれへんし……。けど、クーちゃん嵌めたんは美並唯花っちゅー転校生や]
「ミナミユイカ……」
[うん。今は男テニの臨時マネージャーしとるってクラスの男テニの奴が言っとったよ]
友香里の言葉に仁王は黙って眉をしかめた。
(部員は懐柔されたか……)
「いつからそんな事になっとるんじゃ」
[夏休み明けてホンマに直ぐやったと思う。いつの間にか皆がクーちゃん悪う言う様になって……]
そこまで言って友香里は悔しそうに言葉を切った。
表情こそ見えないが、付き合いの長い仁王には、彼女が今どういう表情を浮かべているか容易に想像出来た。
「おまんのせいじゃないきに…。それよか、お前は大丈夫なんか?妹っていう理由で蔑まれたりしとらんか?」
[ウチは大丈夫。学校ではクーちゃんに言われてクーちゃんとは一切口きいとらんし…。友達がいっつも一緒に居ってくれとるから……]
「さよか」
[ただな…]
「……ん…?」
[たまになんやけどな…、『あんなろくでもない奴が兄貴で可哀相やなー、自分も』っちゅーような事を言われるねん…]
反論したくても自分の事で何言われても言い返すな、言われとるし……。と、友香里は苦虫をかみつぶしたような声を出す。
不愉快さに顔をしかめながら、仁王も内心で悪態をついた。
(はっきりせん事が多過ぎる。…じゃけど、ほっといても解決はしんそうにないな…………)
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