Present

□ペテン師の長い一日
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珍しく早く起きた仁王が柳生とコートで打ち合っていると、見慣れた二人がやって来た。



「おや、珍しいですね…」

「ホントじゃな」



同じく気付いたらしい柳生の言葉に頷きながらボールをいなすと、二人はたった今来たチームメイトたちに近付いた。



「よお。丸井、赤也」

「おはようございます。丸井君、切原君」

「おー、おはよ」

「おはようございまーす」

「珍しいのぅ。二人が朝練なんて」

「それはあなたもでしょう」

「確かにの」



柳生の言葉に仁王はククッと笑った。そうっスよ、と切原も笑う。



「俺はジャッカルに起こされたからよぃ。暇だったし」

「俺もっス!」



丸井はともかく、切原の同室は柳だと思い出し、二人は納得したように頷いた。

その時、切原がボトルを差し出した。



「飲みます?ただのスポドリっスけど」



見ると、丸井も柳生に自分のを渡している。丸井は食べ物ならともかく、飲み物はあまり気にしないらしい…。
柳生がお礼を言って飲むのを見て、仁王も受け取った。

そのまま一口飲む。しかし次の瞬間、顔をしかめて口元を押さえた。



「ゔっ……」



あまりのマズさに胃がむかむかする。思わず膝を付いたがそんなの問題ではない。
手から落ちたボトルが地面に転がり中味が零れているのが見えた。色はどうみても透明に近い。――いったい何入れやがったこのバカども。



「に、仁王君!?どうしたんですかッ。大丈夫ですか!?」



柳生が慌てているのが聞こえるが、何も言えない。否、口を開いたらまず吐きそうだ。
仁王は背中をさすってくれる柳生を手で制しつつ立ち上がると、げらげら笑っている二人を一睨みし、その場を駆け出した。

突然走りだす仁王に、仁王君!?と言って柳生が追い掛けて来るが足を止める余裕はない。そのまま水道に直行すると、急いで口の中を濯いで水をがぶがぶ飲んだ。



「…うっ……。気持ち悪い……」



レンガ色の水飲み台に手をついてがくっとうなだれながら、仁王は苦々しく呟く。
追い付いた柳生が心配そうに大丈夫か聞いて来るが、生憎全く大丈夫ではない。



「…無理じゃ……」

「いったい何だったのですかアレは?」

「……知らん。見た目はスポドリ、中味は劇薬じゃ」



柳生は全く悪くないのだが、ついつい不機嫌な声になってしまう。

素っ気なく返した仁王は、見るからに顔色が悪い。
嫌な汗が吹き出るし、動悸も激しくなっている。息苦しさに、仁王は顔をしかめた。



「一度部屋に戻りましょう?跡部君に言って薬か何か貰った方が良い」



心配そうにそう提案してくれる柳生に、仁王は大人しく頷いた。

しかし、一歩踏み出そうとした途端、体に激痛が走る。



「う゛っ…」

「仁王君!?」

「ぐあぁぁああ!!」



声を上げて崩れ落ちた。








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