道化師と堕ちた天

□番外編(1)
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だからこそ仁王は信じられなかった。従兄が、白石が仲間に虐められているかもしれないという事を……。



第一、何故白石蔵ノ介が虐められなくてはならない

勝つために、楽しむテニスではなく、堅実なテニスを作り出した彼が

どんなに辛くても、二年のときから絶対に自分の仕事を投げ出さなかった彼が…



もし彼の今までの頑張りを全て忘れ、テニス部の、特にレギュラーや顧問が彼を裏切っていたら、仁王は絶対に許さない。
周りを巻き込むのは気が進まないが、心強い姉や親、いざとなったら立海の皆を引き込んででも、四天宝寺を潰す――。





(…まぁ全ては、直接確かめてみてからじゃ……。どうせアイツは仲間を庇うだろうしの…)



潰すなんて事は、彼が拒否する限り起こらない。
そんな事は始めからわかっているため、仁王は柳生にバレないよう、口元に小さく笑みを浮かべた。



(蔵はお人よしだからの…。何となく幸村に似とるかもしれんな…。勝つ事に拘るとことか……)



ふとそう思うと、常勝に固執していた一時期の幸村と、白石が重なって思えた。
二人とも部長という立場を任され、勝つ事を第一に考え、自分を追い込む事を厭わなかった……。

もしテニスのように今も彼が自分を追い詰めていたら……。考えたくもない。



(蔵、一人で背負い込むな。俺が何が起きてるか確かめるけぇ、頼りんしゃい…)



それこそ祈るような気持ちで思う。



(ホンマに堕ちたんか?四天宝寺…。頼むから、テニス部は持ちこたえてといてくんしゃい……)



ほとんど面識もない従兄の大切な仲間たちに向かい、仁王は問いかけた。

いつの間にはいなくなっていた柳生には、気付きもしなかった。





「兄ちゃん」



急に声をかけられ、仁王のは意識は戻る。顔を覗き込むようにして立っている弟に、もう一度丸くなりながら返す。



「なん?」

「ドリンク、真田先輩に持ってけって言われたんじゃ。ここ置いとくから」

「ん、ありがとさん」

「兄ちゃん、何で水分補給しなかったん?」

「友香里から電話来たんじゃ」

「は?友香里?何で」

「さぁの」



意味わからん、という顔をする弟に、仁王は適当に返して目を瞑る。詳しく話して大事にする気はない。



「おまん、練習戻らんくてええんか?赤也に文句言われてもしらんぜよ」



そう言ってやれば、「げ…」といいながら去って行く弟の気配を、仁王は目を瞑ったままで感じていた。





そう、全ては自分の目で見てからだ

四天宝寺が本当に堕ちたのか、テニス部が彼を裏切ったのか

レギュラーの絆はそんなものだったのか…

自分で見て、そして判断する――





(ククッ…。新人戦前に一波乱ありそうじゃ。ホント、テニスやってると退屈する暇がないぜよ。……待っとりしんしゃい、四天宝寺。真実を見極めちゃる……)



仁王は不適に笑った。







西の頂点の地で何が起こっているのか、仁王がソレを知るのは二日後の事――。









初の番外編です!
取り合えず場面は、1話の水分補給しないで柳生に説教されたという話し。仁王の弟が出せた…っ

仁王の体調不調だけの話しだとあまりに短かったし纏まりがなかったので、急遽付け加えで…(^_^;)
仁王は一応、最初から謙也たちレギュラーの事は信じようとしていたという話です


番外編、楽しみにして下さっていた皆さん、アンケートのコメントはいつもチェックさせて頂いています
更新ペースは遅くなると思われますが、今あるプランを全て消化しきれるよう、頑張りますので、気長にお待ち下さると嬉しいです



(2011/10/29)
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