Present

□アイツだけ…
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「…小春とユウジ、千歳と師範、俺と金ちゃん、謙也と財前や。…ちなみにマネは一人部屋な」



淡々と読み上げられた名に、二人は揃って息を吐いた。胸を撫で下ろすとはこういう気分をいうのではないかと心底思う。

よろしく、こっちこそ、と挨拶していた彼らは、二人の名にさっと黙り込んで後ろ振り返った。だが次に告げられたマネージャーの部屋の話題に、すぐに視線を逸らした。



「ええなーっ、一人部屋!めっちゃ広いやん!!」

「遊びに来てええよぉ?金ちゃん」

「ホンマ!?絶対行くわ!」

「あらー、アタシたちはダメなの?」

「そんな事ないよぉっ、皆も来て!ね?」



そんなくだらないやり取りが気にならないほど、謙也はほっとしていた。

そんな自分に嫌気をさしながら……。





「はいはい。言っとくが九時以降マネの部屋は立ち入り禁止やからな」



和気あいあいと話している遠山たちをパンパンと手を叩いて嗜めながら、白石は何て事はなさそうに告げる。
途端に一氏がいかにも納得いかない、という声で白石に抗議した。



「何でや、蔵」

「門限つけな、お前らいつまでも居座るやろ?夜更かしして次の日の練習に差し支えるなんて言語道断や。マネ業やってハードなんやからな」

「それは…」

「そういう事でこの話しはしまいや」



言葉につまる一氏をさらっとスルーし、白石は幸村にマイクを返す。

ハードなわけあるか、と毒づく財前の声は、幸い謙也以外には聞こえずにすんだらしい…。



「それじゃあ昼食をとった後コートに集合だよ。何か質問あるかい?」



四校分のテーブルを見渡しながら、幸村が聞く。
その時、立海の列で思わぬ人物から挙手が上がった。

幸村が発言を促す前に、勝手に話し出す彼の後輩…。



「…部長。何でアノ人がフツーに合宿に参加してるんスか?」

「…っ……」



アノ人。と、コチラを指差す切原に、謙也は身体が強張るのを感じた。



「…取り敢えず、指差すのはやめようか。…白石」

「おん」



一切表情を変えない幸村は、同じく涼しい顔をしている白石にマイクをまた渡す。
白石はマイクを口元に持って来ると、肩を竦めて「しゃあなかったんや」と続けた。



「今回は小石川が家の用事でこれへんから、謙也を外すと財前も来んとか言いかねなかったんや。そうすると団体メンバー足りなくなるやろ?別に仲良くしぃとか言わんから、三日間我慢してや」

「…頼まれても仲良くなんかしないっスよ」



困ったように笑う白石に、切原は心底納得いかないという顔でそっぽを向いた。

そんな時、急に立ち上がる人物が一人…――。



「…ちょっと待てよ!」

「アーン?何だ宍戸」



跡部が怪訝な顔で問う。
謙也も財前も、反論が出る事は最初から予想していたので黙ったままだ。しかし二人の予想に反し、宍戸の言葉は全く違っていた…。





「その話ってさ、ホントなのかよ?」

「――ッ!?」

「…は?」



思いがけない言葉に、謙也と財前はバッと宍戸の方を見た。
眉を顰める跡部に続き、今度は向日が立ち上がる。



「それって侑士の従弟は悪くないって事かよ!?」

「あぁ」

「ふざけんな!女襲うとか最低だろっ!日吉もそう思うよな!?」



怒りを露にし、向日は真向かいに座る日吉に同意を求めた。
急に話しを振られ、それでもシレッと答える日吉。



「……生憎ですが、俺は宍戸さんに賛成です」

「日吉!?宍戸さんもっ、どうしちゃったんですか!?」



心底驚いた表情で、鳳は声を大きくした。

だがそれ以上に、謙也と財前は唖然とした顔でお互いを凝視していた。







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