Present
□新部長たちとルーキー君
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一方、東京の一角で財前と日吉が鉢合わせていた頃、神奈川の彼も、ある人物を見かけていた――。
「はっ?何してんだアイツ?…ここ神奈川だぞ?」
目の前を横切って行く小さい塊を、見逃さなかったのは凄いと思う。
今まで柳生のレーザーやら真田の風やら柳のかまいたちやらを見続けてきたお陰かもしれない。
「――っ、…オイ!遠山!!」
人ごみに消えそうになる赤い髪をした豹柄のタンクトップへ向かって声を張り上げた。
「んあ…?……おぉ!悪魔の兄ちゃんや!」
何つー呼称つけてくれてんだ……、とは思ったが言わないでおいた。
確かに対青学との決勝ではかなりのラフプレイをしたし…………。
それより…。
「俺は切原赤也だ。変な呼び方すんじゃねぇ」
タタッと駆け寄って来た遠山にそう訂正しながらも、切原は周りに目立つ黄色と緑のユニフォームがないか探した。
しかし、そんな色は視界にかすりもしない。
「お前、何でこんなとこにいんだ?」
「練習試合やってん。ちぃとはオモロかったでぇ」
首を傾げる切原に、遠山は二カッと笑って答える。その答えに、今度こそ切原は怪訝な顔をした。
(神奈川でウチ以外にオモシレー試合なんか出来るとこあるか…?)
それは自画自賛でもなんでもなく、ただの事実だ。
今日は普通に学校で練習があった。そもそも四天宝寺が来ているなど初耳だ。
つまり他校と試合したのだろうが、立海ならともかく、たいして強くもない学校のためにわざわざ交通費などかけるか?と切原はもっとも事を思う。
「じゃあお前、他の部員は?」
財前とかどうしたよ、と聞く。
あっけらかんとした顔で「知らん」と返って来るとは、さすがに思わなかった……。
「知らねぇってなんだよ…」
「ウマイたこ焼きの店探しとったんや。財前はまだ話ある言うたから置いて来たっ。なぁ、あんさん良い店知らん?」
呆れる切原に全く悪びれもせず説明する遠山。
(どんだけ自由なんだ…)
仁王先輩より自由かも……。と、つい自身の先輩と比べてしまう。
そもそも彼はわかっていてやっている事。ときにはワザとだったり、とにかく、普段は適当なようでいざとなれば自分の行動に責任は持つ人だ。
……が…、目の前の彼は確実に無自覚でやっているだろう。
これが計算だったら、詐欺師も神の子も騙された事になる…。
…有り得ない……。
(来年こんなの入って来たらどうすっかな…。ぜってー柳さんに泣きつきそう……)
考えるだけで顔が引きつる。
図らずも、切原は日吉と似たような事を考えていた……。
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