道化師と堕ちた天

□リクエスト
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昼休みに思った通り、仁王は二人の共通点を探しながら午後の授業を潰した。
潰したとはいっても、ノートはとっているし、聞かれた事には一応答えているので、誰も仁王が心ここにあらずだったとは思わないだろう。もっとも丸井は、聞いてる振りして聞いてないのが仁王だという事は端から知っているが……。



放課後、仁王は丸井に誘われ、部活に顔を出していた。
引退した直後は、切原に部長としての自覚を持たせるために手出しはしないでおこうといっていたのでが、結局こうしてちょくちょく出向いては一緒になって端の方で練習している元レギュラーたち七人。特に丸井は、主にジャッカルを誘って、たまには仁王を巻き込んで、たびたび出没しているらしいと、以前切原や後輩たちが言っていた。



「お前さん、今週部活出るの何回目じゃ?」

「あぁ?三回目ぐらいじゃね?」

「今週まだ四日しか経っとらんけど……」

「あぁ、一昨日はチビの事迎えに行かなきゃなかったから早く帰ったんだよ」



いやいや、そういう話しじゃない。と思いながらも、サラッと答える丸井に、仁王は突っ込むのをやめた。

そんなに参加したいなら好きにすれば良い。取り敢えず今日は気分が乗らないから自分は巻き込まないで欲しかったが……。
そんな事を考えながら、仁王はのらりくらりとシューズを履いたりユニフォームに着替えながら、どこか木陰でさっきまでの続きでも考えてようと頭の片隅で考えた。

白石と柳生の共通点を探しているはずが、あまりにも授業が退屈なため、ついつい白石と他のレギュラー陣との共通点や、立海のレギュラー同士の共通点など、とにかく誰かと誰かの共通点を探すのにはまっていた仁王。
丸井や切原に言えば、まず間違いなく、妙な事考えてるやら、相変わらずお前って変わってるな、やらと言われるであろう内容だ。

もっとも仁王は、他人にどういわれようが自分が面白い事ならそれで構わないため、一人で黙々とはまっていってるのだが…。
自分でも変な部分に注目しているのはわかっているつもりでも、自分が良いなら良いのが仁王という人間である…――。





「おや、仁王君も部活に参加するんですか?」



聞きなれた、今の今まで考えていた人物の声に名前を呼ばれ、仁王は靴紐に落としていた視線を上げた。



「おう、柳生。そういうおまんもか?」

「えぇ。委員会の仕事が一段落しましたので。真田君も早く片付けば来ると言ってましたよ」

「ほう…。そりゃ良い情報じゃ。早速赤也に報告してやろうかのう」

「やめたまえ。切原君にはなるべく構わないという約束でしょう?」

「とは言うが、丸井は普通に構ってるぜよ?」



言った側から切原と話している丸井を指差し、仁王はワザと少し首を傾げて言う。
柳生は溜息を付いて、少し大きめの声で丸井を呼んだ。



「おー、比呂士じゃん」

「丸井君、作業が終了し次第真田君も来るそうですよ?その行為は約束違反では?」

「げっ…。マジかよぃ」



軽く手を振って来る丸井に、柳生はキュッとメガネに手を当てながら指摘する。
げっと顔を顰めるのは、丸井だけじゃなく、切原もだった。



「……柳生、お前さん自分で赤也にバラしてどうするん…?」

「いや…、それは…っ。これは不可抗力です」



呆れた顔をする仁王に、柳生はワザとらしく咳払いをしたあと、もっともらしく返した。
ニヤッと笑う仁王に、気まずそうに柳生は視線を反らす。

面白そうに柳生の視線の先に回りこんだ仁王は、ワザと柳生の目を覗き込む。若干の身長差のため、柳生の表情は仁王には覗き込めた。

そのとき、ふと気付く。



(蔵と俺の身長差もこんなもんじゃのう…)



厳密にいえば柳生と白石の身長は同じではないが、だいたいあっている。



(俺が蔵になれるんじゃし、もしかしたら柳生もなれるかもしれんのう…)



俺になれる柳生なら……。







(…面白そうじゃけぇ)



今度どうにか言い包めて試してみようかの…。

そんな事を思いながら、取り敢えず、今はこのままこのネタでからかおうと決めた仁王であった…――。









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