道化師と堕ちた天
□プロローグ
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午前中の疲れを癒す至福の昼休み。他校よりも明らかにテンションの高いこの学校の生徒たちは、昼休みの盛り上がりも人一倍デカイ。
そんな賑やかな喧騒をBGMに、人気のない空き教室で、五人の男子生徒が向かい合って居た。
「はんっ、ちゃんと来たんやなぁ」
「ホンマ、呼び出したら必ず来る人やなぁー。さすが完璧人間様や」
「バーカ、暇何だよ。誰も相手してくれる奴なんかいねぇから!」
「ギャハハハッ!それ最高っ。良い事言うわ自分!」
不快な声を上げで大爆笑し始める四人の生徒たち。
そんな彼らと向き合う少年は、ただ無表情で真正面に立つ少年の胸元辺りを眺めている。
「おい、反論したらどうや!?」
「…っ……」
一瞬にして笑いを引っ込めたリーダー各と見られる少年に胸倉を捕まれ、少年は少しだけ眉をしかめた。
「何やその顔。不満あるなら言ってみぃ!」
「…………言うたら帰してくれるんか…?」
少年は表情も抑揚もない淡々とした顔と声で、視線だけを目の前の少年に合わせる。
ギリッと歯ぎしりをして、リーダー各の少年はそのまま掴んでいる少年の体を、開け放してある窓から外へ力任せに押し出した。
そのままベランダの壁に体を押し付ける。背中から勢い良くコンクリートにぶつかり、少年は顔を歪めて小さく息を吐き出した。
「お前マジで死ねよ!」
「オオッ!良えなぁ、やったり!!」
「……ぐっ…」
物凄い形相で睨んで来る少年の言葉に、周りにいた少年たちはワイワイと拍車をかける。少年の息苦しそうな声など、誰も聞いていなかった。
「さよならっスなぁ…、――センパイ。……死ねやッ!!」
それほど自分と変わらない大きさの少年が、渾身の力を入れて少年の体を持ち上げる。全体重をかけて押さえ付けられ、少年の体はベランダの手摺りの上に背中が乗っている体制だ。既に頭は空中に出ている。
「…くっ……や、めや!…人殺しになる覚悟、自分あるんか……?」
途切れ途切れになる呼吸の中、必死に抵抗しながら少年は今にも自分を殺そうとする少年に問い掛けた。
「今更綺麗事抜かしとんやないわ!」
のしかかっていた少年がよりいっそう体重をかけて少年の体を押す。
その時、突如圧迫していた体が消えていた。
体が頭から後ろに落ちて行く感覚
感じる浮遊感
「白石ぃぃーーッ!!」
驚きで見開かれた視界に、取り巻きの少年たちを蹴散らして飛び込んで来る少年の姿が映った。
(2010/12/22)