道化師と堕ちた天

□B
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仁王は変装を解いて従兄の帰りを待ち構えている。

自分の目で見て確かめた結果、何をするかはすでに決めた。そのための助っ人もすでに呼んでいる。
後は白石に直接何があったか聞くだけだ。



ガチャッと音がして、鍵の開く音がした。
ただいま、という言葉は聞こえない。当たり前だ、この時間この家には誰もいないはずなのだから…。

バタバタッという音と共に、リビングに白石が現れた。



「雅っ、お前学校は!!」

「第一声がそれなんか…」



つくづく真面目じゃのぅ…、と突っ込むと、白石は顔をしかめて仁王の前へ来て、バンッとテーブルを叩いた。



「真面目に答えやっ。自分なんなん?昨日からはっきりせんと、何しに来たんや」



厳しい声色に顔色一つ変えず、仁王は白石の顔を冷めた目で見上げた。
一瞥し、ゆっくりと口を開く。



「おまんの様子を見に来たんじゃ」

「…俺の?何のために」

「隠さんで良か。お前がどういう目にあっとるんかはもう分かっとる」

「なんの事や」

「今日学校に忍び込んだ。…イジメられとるんじゃろ、蔵――」

「――ッ!?」



あくまでも知らぬ振りを決め込む白石は、突然の直球な指摘に、目を見開いて言葉に詰まった。
仁王はそれを肯定と受け取る。



「おまんの味方は、忍足と顧問とルーキーしかおらんのか…?」

「っ何で、それを……」



何とか声を搾り出す白石。
本格的にイジメの事実を認める事になっているが、本人はそんな事にも気付かないほど動揺している。



「言ったじゃろ、忍び込んだって。朝おまんが忍足と話てたんも、顧問に助けられとったんも見とった」

「…どうやって知った」

「おとつい友香里から電話があっての。お前、友香里に電話帳勝手に見られとるぜよ?」

「あのアホ…っ」



余計な事を、と吐き捨てる白石だが、その声に覇気はない。

友香里を責めるな、と釘を刺しながら、仁王は四天宝寺で起きている本当の事を説明するよう頼んだ。



白石は暫く無言で黙り込む。
何か迷っているのだろうと思い待っていると、やがて小さく頷き、白石はいつもより明らかに弱々しい声で言った。



「…俺の部屋で話そ」






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