道化師と堕ちた天

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「――もしもし?…誰じゃおまん……」



不審そうな声を隠そうともせず、問いかける。
すると、間髪入れずに声が返って来た。



[マ、マーくん…?]

「え……、友香里?」

[うん、…久しぶり]

「……っ、ちょっと待ちんしゃいっ」



思わぬ人物からの電話に戸惑いつつも、側に柳生と切原がいる事を思い出し、仁王は直ぐ様場所を変えた。
二人の、特に切原からの興味深気な視線を感じながらも、仁王は無視を決め込んだ。





「……で?何で俺の番号分かったんじゃ?」



十分に声が聞こえない範囲まで来てから、仁王は思った事を口にした。



[クーちゃんの携帯から勝手に見てん……]

「…何しとんじゃあいつは」



あっさりと答える友香里に、個人情報流出じゃろ、と仁王は呆れて溜息をつく。

しかし友香里はそんな仁王の態度に笑う事もなく、何故か、仕方ないねん…、と小さく呟いた。



(…………?……)



意味が解からず仁王は首を傾げる。



何が仕方ないのだろうか?

世間一般的に、兄妹でも人の携帯を勝手に見ていい理由にはならないが、友香里の性格を考えるとそれくらいはしてもおかしくはないと仁王は思う。ましてやそれが従兄の携帯番号を知るためだとしたら彼女は平気でやるだろう。

だがそこまで考えて疑問が生じた。



別にこっそりと盗み見る必要はないはずなのだ――。



仁王の知る限り、従兄妹たちは仲が良い。
妹が従兄の番号を知りたいと言えば普通は教えないか?

では何故友香里はそれをしなかった……?



喧嘩でもしたか…?

兄に知られたくない理由がある?

それとも教えて貰えない状況が何かある?



そこまで考えて、仁王は推察を止めた。
直接聞けば済む話しだ。



「…よう分からんが要件はなんじゃ?世間話じゃないんじゃろ……?」



疑問系でいて疑問系じゃない問い掛けをする。

案の定友香里は、おん、と頷いてから、あんな……、と続けた。







[…マーくんっ……、クーちゃんを助けて欲しいんや!]







予想外の言葉に、仁王は電話を持ったまま固まった。






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