道化師と堕ちた天
□A
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「――よぉ、蔵」
「雅っ!?」
仁王はいつもの飄々とした顔で少し首を傾げる。
驚いた顔の白石に、満足気にニヤッと笑った。
「…………」
「……………………」
「…………で?」
「…で?」
「何しに来たかて聞いてんねんアホっ」
ところ変わって白石の部屋――。
暫く無言で向かい合っていた仁王と白石。最初に沈黙を破ったのは白石だ。
言いたい事はわかるがワザとはぐらかすと、白石はジト目で机のバシンッと叩いた。
「久しぶりに友香里たちの顔見たくなってのー」
「嘘つけ。白々し過ぎやで」
「信用ないのぅ」
「当たり前や詐欺師が」
「一応『コート場の』が付くんじゃがなぁ」
「よく言うわ。……たく、ペテンも極めりゃたいしたもんやで…。何や?決勝の不二クン相手に使たやつ。勝手に人になるなや」
「俺の意思じゃのぉてウチの部長殿の命令じゃし」
「揚げ足取るな」
ああ言えばこう言う。仁王ののらりくらりと本題から逃げる話題に、さすがの白石も少しずつ話しが逸れて行く。
しかしそこは聖書とまで言われる白石。きちんと痛い所を突く。
「で?さっさと本題に入りや」
「んー?何の事かのぉー」
「…雅治…………」
白石の顔に苛々としたシワが寄る。
おっ、と仁王が思ったのもつかの間、誰かが階段を駆け上がるタタタッという音が聞こえ、次の瞬間扉が勢い良く開いた。
「マーくん!」
「友香里!いきなり入ってくんなやっ」
「良いやん、クーちゃんのケチ」
「あんなぁ…っ」
「細かい事気にすんじゃなか蔵。…よぉ、元気しとったか友香里」
「うん!」
仁王の問いに、友香里はニコッと頷いた。
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