道化師と堕ちた天

□F
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遠山と別れてから既に何時間かが経ち、三時間目の体育の時間。それも一組と合同。
今授業でやっているのはサッカーだ。





あの後予鈴ギリギリに教室へ入ると、ほとんどの生徒はすでに教室にいた。相変わらず睨み付けてくるクラスの大半はスルーし自分の席へ着くと、隣の席の謙也が心配そうな顔をして話しかけてきた。



「珍しいな。何かあったん……?」



珍しいとは予鈴ギリギリに来た事だろう。確かにいつもの白石はもっと早い。

自分の事じゃないのに自分の事のように心配しいつも気にかけてくれる謙也。出来るだけ一緒にいてくれようとし、実際そのお影で随分に助かっている。
しかし登下校まで頼る訳にはいかず、そこまで迷惑をかけたくない白石は、途中まででも向かえに行こうか、という謙也の申し出を突っ撥ね続けている。――実際戒律に扮した仁王は白石の家から通っているのだが、まだ正体を明かしていないので登下校は一緒に出来ない。それにその事を謙也は知らない…。

余計な心配をかけてしまったらしいと気付いた白石は、金ちゃんと立ち話しとっただけや、と笑ったのだった。







「――それではAチームとDチームは手前側。BチームとCチームは置くで試合や。十分後に始めるでー!」



体育担当の教師の声に、白石と謙也は揃って立ち上がった。二人は同じチームだ。
Dチームの方を見ると、仁王――もとい戒律が、同じチームの奴らと談笑している。



(……金ちゃんに話したの絶対雅やろ。たく何考えとんねんあのアホ!)



従兄弟の自分から見てもダレコイツ……と言いたくなるような豹変っぷりを軽く睨み付ながら、内心悪態を付く。
見た目がビフォーアフター状態なのもあるが、一番違和感だらけなのはあの笑みだ。中身が誰だか分かっていて見ると気持ちわる過ぎて鳥肌が立つ。

仁王雅治の満面の笑み――。見たことある奴なんているのだろうか……。





「…アイツか。例の転校生って」

「っあぁ、…せやな」



白石の視線の先を追った謙也が、屈伸をしながら言って来た。



「何か見た感じ芥川とか思い出すわー。氷帝の。コイツの方がデカイけどな」

「髪色だけやん」

「あのテンションの高さとかもやって。俺侑士んとこ遊びに行ったとき一回会っってるんや。向日とも。あー後アイツ、菊丸っぽい」

「それは髪の長さやろ」

「だからー、雰囲気がやねん」

「はいはい。わかったから行くで。どうせ俺にボールなんて回って来ぃへんけど真面目にやっとるフリぐらいせな。二人まとめて評価一にされんでー」



気のないフリをして先を行きながら、白石は内心冷や汗ものだ。

芥川と個人的に知り合いなのは初めて聞いた。しかしそれは今どうでも良い。
仁王がモデルにした他校生の名前がポンポン――それも正確に飛び出し、白石は内心、雅ぁー!と厳しく突っ込みを入れたのだった。






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