道化師と堕ちた天
□K
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日曜を挟んだ休み明け、白石と登校した仁王は、自分の靴箱は綺麗にスルーし、鞄の中から上履きを取り出した。
そのまま何食わぬ顔でスニーカーを鞄に仕舞う。一昨日まではローファーだったが、馬鹿な男子どもとバトるには何かと不便なので変えたのだ。
「はぁ…。相変わらずやな」
自分の靴箱を開けた白石が、顔をしかめながら言った。
白石の靴箱にも上履きは入っていないが、その変わり紙屑や画鋲、カッターの刃などが詰まっていた。別に手を突っ込む馬鹿はいないから何の意味もないのだが、見ていて気分が良いものではない。
「こっちも同じみたいなもんだなー」
暢気に中を確認しながら、仁王はそれをデジカメで撮っている。続いて白石のも写すと、中を綺麗にするわけでもなく当たり前の顔で校舎に入った。
「オイコラ待ちや。お前何しとんねん…」
「記念撮影。俺イジメられるとか初めてだしー。記念にブログでもやろっかな。『雅君奮闘記!』みたいな?」
「やめとけ。ただの馬鹿や」
「うん、わかってる。冗談だし」
ジト目で自分を見る白石に、仁王は真顔で答えた。
二人の暢気なやり取りに、側で聞き耳を立てていた生徒たちは舌打ちする。それに気付きながらも、二人は態度を崩さない。
そもそも白石の靴箱は仁王が来る前からあんな状態だし、綺麗にしても次の日には汚れるのだからいちいち片付けるのも面倒臭い。それでもそこそこ片付けていたが、仁王に至っては端からやる気がなさそうなので、白石もやるのをやめた。
「…雅、気ぃ付けろよ。あいつら一昨日のでお前の事完全に敵視してんで」
「わかっとるぜよ。それが目的じゃき」
「はぁ…」
小声で会話しながら、さらりと宣う仁王に白石は溜息をついた。
「クーちゃん、ミーちゃん!」
一年の靴箱のところへ行っていた友香里が二人のもとへやって来た。友香里も上履きは持ち帰っているので心配はないが、何かされていなかったかと白石は聞く。
友香里は手にしていた紙を二人の前に出しながら、呆れたように言った。
「今日はこれだけや。なんや思ったより拍子抜けやったわぁ…」
紙に書かれている文章を、仁王は口に出して読む。
「白石蔵ノ介の妹であるお前も同罪だ。戒律雅もろとも、三人纏めて後で後悔すると良い……。何だこりゃ?」
「なぁ、ヌルイやろ?」
「確かに」
「…友香里。自分はもうちょい危機感持ちや」
「はーい」
ふざけてるのか、と言うような友香里の軽い態度に、白石は呆れ半分、安心半分で溜息をついた。
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