道化師と堕ちた天

□リクエスト
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部活終了後のだいぶ遅い時間。
部室に残り、一人部誌を書いていた切原は、ドアをノックする音に顔を上げた。



「誰だ…?開いてるぜー」



新レギュラーの誰かが忘れ物でもしたのだろうと、切原はすぐに手元に視線を戻しながら生返事をする。
ガチャと音を立て静かに開くドアには、見向きもしない。

早く仕上げてさっさと帰りたい。

しかし赤也の視線は、すぐに上げられる事になる。



「…赤也」

「――ッ!?」



耳に馴染む聞きなれた声に、切原はバッと顔を上げた。
そこに居た人物に、ギョッとして立ち上がる。だいぶ失礼な態度をとってしまった気がする…。



「や、柳先輩…っ」

「やぁ、随分熱心に書いていたようだな」

「幸村部長たちと帰ったんじゃ…」

「あぁ、先に帰ってもらった。二人はよりたいところがあるらしくてな」



動揺からか、そんな事しか聞けない切原に、柳は実にサラッと答える。



「す、すいませんっした。俺、全然見てなくて…っ」

「気にするな。普通は新レギュラーの誰かだと思うのが当然だ」

「…っス……」



いままで同様、ナチュラルにさっき自分の思った事を当てられ、切原は若干気まずい思いをする。

そんな気持ちを振り払うように、何故ここに来たのかと話題を変えた。
その問いにも、柳は平然と答える。



「そろそろお前が帰る頃かと思ってな」

「……は?…」

「一緒に帰ろうと誘いに来たのだが、何か用事があったか?」



ポカンとした表情の切原に、柳は直球で問いかける。
こう聞かれてしまっては、切原は三強にはまず滅多に逆らえない。ましてや切原は柳と同じ方向に住んでいる。断る理由がない。断る気もないが…。



「いやっ、大丈夫っス!ちゃっちゃと終わらせるんで、ちょっと待ってて下さいっ!」



そう言うなり、切原は椅子に座り直し、部員の気付いた事や、ストックのなくなりかけてきた備品について書き込んで行く。
欠席、遅刻、早退者などの記入や、メニュー一覧などはすでに書き終えていたため、それほど時間もかからない。人数が多いと途中で出入りも多く、把握するのも面倒だ。氷帝などどうしているのか、本気で不思議である。





「お待たせしましたっス。付き合わせちまってすいません」



事務室に鍵を返し、職員室で顧問に部誌を提出し終えた切原は、廊下で待っていた柳にかけより置いていたラケットバックを肩に担いだ。



「構わないさ。では行くか」

「そうっスね」



ふっと笑みを浮かべる柳に、切原は大人しく従った。







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