SS集

□毒手とイリュージョンと?
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「なぁ兄ちゃん!!」

「ん?」



U−17合宿に来て数日。自販機にドリンクを買いに来た俺は、突然聞いた事があるようなないような声に呼び止められて振り向いた。

ここに俺の事を兄ちゃんなんて呼ぶ奴は断じておらんはずじゃけど、周りには俺と声の主しか気配がないけぇ、俺の事を呼んだんじゃろう。多分…。



「なぁなぁ、兄ちゃんって白石になれるんよな?」



ほらな。やっぱり合っとった。
近付いて来て俺を見上げるちっさい一年は、赤也や丸井よりも背が低くてなかなか新鮮じゃ。



「おぅ、なれるぜよ」



そう答えてやれば、大きい目をキラキラワクワク?させて見上げて来る遠山は、やっぱ俺の周りにはおらんタイプじゃ。



「なら兄ちゃんも毒手持っとるんか!?」

「毒手…?……。…あぁ、左手か…」



そういや包帯巻いた左手を毒手って事にして一年レギュラーを押さえ込んどるとか何とか、参謀が言っとったの…。
ウチの参謀はどっからそんな情報を仕入れて来るんじゃか…。四天宝寺って大阪じゃぞ……。



「なぁなぁ、持っとるん!?」



おっと、意識が逸れとったら催促されたぜよ。
…まぁ、そんなもん持っとるわけないが……。まんま答えるんは面白くないダニ…――。



「俺のはイリュージョンじゃき。白石になった時だけ使えるんよ」

「ホンマか!?」

「おーホンマじゃ。じゃけぇ、白石がおらんところでも悪さしたらいかんぜよ?」

「おん!わかったで!」



元気に頷く遠山。ここまで素直に頷かれると、ちょぉっとばかし意地悪してやりたくなるのぅ。



「越前にやたら試合申し込んだり、忍足謙也と早食い競争したり、風呂場で騒いだり、そこら辺で寝過ごして千歳に探しに来てもらったりもいかんぜよ?」



ここ数日で見かけた遠山の行動を上げると、「何でそんな事…」と。お、弱冠青ざめとるな。からかい過ぎたかの。

じゃけぇ、あんだけ目立って騒がしくしとったら視界に入るしのぅ…。そこらぷらぷらしとったら見付けたのもあるが……。



「プリッ。内緒じゃき」



悪させんかったら俺からも白石からも毒手はされないんじゃ、いい子にしときんしゃい。そう言えば、遠山は「まかせときぃ!」言うてどっかに走っていきおった。



(最初から最後まで騒がし奴じゃの…)





そう思って遠山の行った方を見とったら、また後ろから声をかけられた。



「勘忍なぁ。仁王クン」



今度は誰かもわかる。



「やっぱ聞いとったか。白石」

「金ちゃん探しに来たらたまたまな」



そう苦笑いする白石。
部長も大変じゃな。って言ったら「今仁王クンが脅してくれたから暫くは大人しゅうしてると思うで」とぬかしおった。脅しとは失礼な。



「心外じゃのぅ」

「そうか?せやったら勘忍」



まったく悪びれもなく謝る白石。
笑顔が無駄にキラキラしちょるぜよ…。


たく、この似非聖書。

完璧とか言うたの誰じゃ。俺もしょっちゅう言われとるが、こいつも大概調子良い性格しとるぜよ。









仁王は自分のペテンに素直に引っ掛かってくれる遠山の事を結構気に入っていると思います
純粋でコロコロ表情が変わるのが面白かったり…。立海にはまったくいないタイプですからねぇι(苦笑)

白石が登場したのはたんに絡ませたかったからです←



(2011/03/26)

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