短編置き場
□Happy Valentine's Day!!!
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「え、休み?」
今日はバレンタインだ。
だから昨日は頑張ってチョコレートを作って来た……ものの
肝心の彼は休みのようだ。
何度振り返った所で一番最後の窓際の席には、いつもの外ばかり眺めてた彼の姿は無かった。なんだ…
折角作って来たのに、台無しになっちゃうかも…
「あの猿、もしかしてガールフレンドでも作って遊んでんじゃねぇのか?今日はバレンタインだしな。」
「そんなはずがなかろう!佐助はそういう……ふ、ふしだらな、ことは!!」
「そうかも…」
伊達君の言う事は…もしかしたら当たってるかもしれない。猿飛君はそういうの大事にしそうだもの。
チョコは仕方ない。帰ったら自分で食べるしかない、か…
「おいおい、まさかチョコレート作って来たのか?猿に?俺には?」
「これ…」
「市販の麦チョコかよ!Goddamn!!」
袋に入った麦チョコを真田君と伊達君に渡すと、なんとも正反対の反応をしてくれて面白い事面白い事。
悪態をつく伊達君の横で袋を開く真田君…反応としては真田君が正しい。
そうだ、どうせなら真田君にチョコ渡しといてもらおうかな。
「真田君、これ猿飛君の分なんだけど…」
「うむ、渡しておこう。きっと喜ぶ。」
「Heyhey…こりゃどういう事だ?本命か?明らかに俺らと違うじゃねーか。粒状の俺らと違ってハート形とは…」
この男、本当に嫌な所をつついてくる。
本来なら放っておいて欲しい所。ぼっと頬が火照るのを感じて、横取りされたチョコを取り返しにかかった。
が、元々の身長差は背伸びしたってそう変わらず。
「わ……悪い!?私だって女の子だもん!」
「おいおい、猿のどこがいいんだ?ただの幸村の保護者だろ。」
「な…そ、それは心外ですぞ!俺はもう子供では…」
「もう保護者でもなんでも良いから返してよ!」
からかうように天井に向かって上げられたデコボコのチョコレート。私が言うのもなんだけど、よくハート形とわかったものだ。
いやいやそんなことよりクラスの皆の視線が…見て!かすがさんが呆れ気味に私を見てる!!
「それは猿飛君の分!人の本命取るとか最低だよ伊達君!」
「え?本命?」
振り返れば、髪の毛ぼさぼさの猿飛君が鞄を肩に立っていた。
えっ…欠席じゃ…
………あ、何、遅刻?
「俺?え?俺が本命なの?」
「べ、べつにそういう…」
「違うのか!じゃあ別に俺が食べても「ああ駄目!!!」
渾身の力で伊達君の頬を殴り飛ばし、取り返したチョコを猿飛君へと投げつけた。
私の手作りチョコレートは腕に当たってぼとりと落ちる。
ちゃ、ちゃんと気持ちも伝えようと思ってたのに…伊達君の馬鹿!!
恥ずかしい!もう知らない!もー耐えらんないこんな教室の真ん中で…!
「別に猿飛君の為に作ったんじゃないんだから!!昼飯にでもしなさいよ!!」
指を指してそう叫び、私は鞄を背負って授業の一つも受ける事無く学校を後にした。
校門を駆けて行く彼女の姿…
ああ、危ない。信号無視はあれだけ駄目だって…
「砕けて粉々じゃないの…」
「あ…あの怪力女…!」
「腫れておりますぞ政宗殿!今すぐ保健室へ!」
「い、いいって!俺はそういう消毒とか……いいっていってんだろ幸村ァ!!」
ずるずると引きずられていく竜の旦那を後目に、俺はチョコレートの袋を開けて一欠片を口に含んだ。
………不味い。これは酷い。
「教えてやんなきゃなぁ…チョコの作り方。」
着いたばかりの学校を飛び出して、にやけた口元を隠したまま彼女の家へと走り出した。
Happy Valentine's Day!
愛しい人よ、良い一日を
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