きたないこみばこ
□クラークと呼ばない理由
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「クラーク…」
弱々しく名前を呼ぶフェイにワンダバットは微笑みかけた。
「久々にそう呼ばれたな」
「そうだね、ごめん…君が人間に戻れるまでワンダバって言うって誓ったのにね」
「いいや。気にしていないよ、フェイ。こちらへおいで」
ワンダバットがぽんぽんと自分の隣を叩く。ぴょんとそこに座るフェイの頭を撫でてやると、フェイの双眼から涙が零れた。
「憎いのかい?」
「ああ…サッカーを守ろうとした君だけが、こんな酷い目に遭って。
罰を受けるのは僕でよかったんだ」
「私はおまえが元の体のままで嬉しいよ」
何度このやり取りをしたのだろうか。フェイの涙を拭ってやる器用な指が無いことを悔やみながら、その涙を雑把に拭う。
「ありがとう。僕はまた君とサッカーがしたい、クラ…ワンダバ」
またクラークと呼びそうになり、慌てて言い直すフェイにワンダバットはふふ、と笑う。
「フェイは昔から自分の決めたことは頑なに守るな。
私も早くまた君にクラークと呼ばれたいよ」
「うん…」
フェイはぎゅっとワンダバットに抱きつく。昔とは全く違う体格、触覚。
ただ、鼓動だけは変わらない。居心地のいいワンダバットの鼓動がとくとくとフェイに伝わる。
「ワンダバ…人間に戻ったら、僕を抱き締めて」
「ああ。ずっと抱き締めてあげよう、フェイ」
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完璧に、こうだったらな妄想。
補足
クラーク・ワンダバット、フェイ・ルーン
二人はエルドラドに対抗する学生運動の2トップ。
しかしエルドラドに居場所を突き止められワンダバットがフェイを逃がし、彼だけがエルドラドに捕まる。
無事生還したワンダバットは熊に姿を変えられてしまった。
ワンダバットの元の姿を、サッカーを取り戻すため、フェイは誓いを立てる。
「絶対にクラークを人間の姿に戻し、また二人でサッカーをやる」
フェイワンなのかワンフェイなのかは難しいところ。