きたないこみばこ

□おまえをまだ愛してる
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泣くほど愛した人が居たの続き
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また、彼が来ましたよとチャンスウに言われて、僕は思わず溜息をついてしまった。
ありがとう、行って来ると返事をして宿舎の玄関へと向かう、ある晩夏の日暮れ。
玄関を開けると昔恋をした男が立っていた。
「何かな...平良君?」
「久しぶり、だな.........アフロディ」


おまえをまだ愛してる


「久しぶりだって?」
僕は後ろ手に玄関の戸を締めた。
全く何を君はバカげたことを。今月だけでも彼は少なくとも2回は来ている。此処、韓国へ。
どこから移動費だのなんだのが出るのだろう。まあ、世宇子は私立だから、さしずめ両親か祖父母に財産でもあるのだろう。
「きょ、今日はおまえに...」
「もう、君と付き合う気はないよ。君は何度同じ答えを聞きにわざわざ韓国(此処)へ来るんだい?」
口籠もる平良君にぴしゃりと言い放つ。平良君は目を伏せた。
「なにが、ダメ...だったんだ?せめて、それだけでも...」
僕は平良君から視線を外して、近くのプランターの前にしゃがんだ。
「君に魅力を感じなくなった以外ないよ」
言いながら、綺麗な花の花弁をつまむ。名前は、忘れた。
「本当なのか?どうして?」
「君に興味が向かなくなったんだ」
ぶつっと横に生えていた雑草を抜いて、ぽいと捨てる。
「じゃあ今おまえは夏祭りの時の、あの男に興味があるのかっ!?」
「そうだよ」
「向こうから言い寄られたのか?それとも...」
「ああっ、もう五月蝿いなあっ!!」
苛立って、言葉を遮った。
いきなり立ち上がったせいで、足下がふらついた。
「質問ばかり!!僕は君のそういうところが嫌いなんだ!僕以外に興味はないのっ!?」
言い切ると、平良君はびっくりするほど縮みあがっていた。
沈黙が流れて、平良君が口を開いた。
「俺は、おまえを...愛してる、から...」
ぽつぽつとそう言われて、鳥肌が立った。
「...気持ち悪い」
僕は平良君にそう言い残して、合宿所に戻った。



「彼は...彼とは大丈夫だったんですか?」
談話室に行くとチャンスウは日本語の本を読んでいた。まったく、頭のいい人は大概名作をよく読んでいる。この夏目漱石集だって。

僕はチャンスウの隣に座った。
「フって来たよ」
「彼はなんと?」
「さあ?」
チャンスウは栞をはさみ、ぱたんと本を閉じた。
「貴方は彼をフったのではなく、突き放したんですよ?一方的に」
「そ、そうかもしれないけれど...僕、もう平良君に何もないから」
「そのお相手は平良、というのですね。私の推測ですが、平良は貴方に未練をたっぷり残していますね」
どんぴしゃりだ。
「ふふ、なんで分かるんだい?」
「笑い事ではありません。
彼の気持ちは、私にも解りますから」
「え?」
僕の疑問には一切答えず、気分を仕切りなおしたようにチャンスウは自主練に行くと言って談話室から出ていった。
なぜだか僕は鳥肌がたった。嫌悪感ではないのは確かなのに...



チャンスウはサッカーボールを片手に、グラウンドには向かわず照美の元カレとやらを探していた。
「まったく、私は何を必死になっているんでしょう...」


飽きた\(^O^)/続きも忘れた\(^O^)/

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