きたないこみばこ
□終電逃しちゃって
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3月の夜はまだまだ冷えて、風が吹くたび隣であーとかうーとか寒がる声。
「静かにしろよ、うるせーぞ」
どうせ俺たち以外誰も人は居ないけれど。
先輩なんだから泊めさせてやれよ、と大和に言われて終電逃したバカと一緒に待つホーム。
今日は中学以来に会ったチームのメンバーで同窓会をして、それぞれの今を聞いて盛り上がってバカみたいに飲んだ。すると当然のように酔い潰れた奴が出てくるわけである。そこは千宮路財閥の現総取締の大和様が自分の車に奴らを乗せて自宅に泊めさせるという、キャプテンらしいというか規模が違うというか……。とにかく、俺や他の生き残りは各自解散となったのだが……。
郷石ときたら呑気もいいもので、この調子である。
「護巻先輩は寒くないんですか」
腕を擦りながら郷石が寒さでぎこちなくなった声で訊いてくる。
「薄着のおまえと違って着込んできたから」
「さすが護巻先輩、ぬかりないですね」
いやいや、予報見なかったそっちがダメなだけだろ、と言おうとして口を閉じる。
普通の人より酒が強くてもこいつだって酔ってるからなぁ、俺も、人のことは言えないが。だが今まで経験してきたエグイ飲み会を全て介護側に回ってきたくらいには耐性がある。
ちょっとフラフラしている郷石を見ていると、そういえばこいつと酒の席を供にしたのは今日で初めてだと気付いた。眠たそうに瞬きをして寒がる姿にフッと笑いが零れた。
「ん?なんですか?何かおかしいですか?」
「え、いや…」
やたらとっつく後輩に返すいい言葉が思いつかなくて、咄嗟に俺と同じ白髪に手を乗せる。
「身長、伸びてないなって……」
「なっ…!そんなことないですよ!」
呂律の回らない反論。成長期止まった?と訊ねると先輩がばかみたいに成長しすぎなんだと怒られる。
それでもそのままわしゃわしゃ頭を撫でてみると髪型が……とは言いながらも嬉しそうな顔をみせる。
あきた……
このあとごまごうちゃんがハグしたりするのにもう終電のホームに誰も居ないがダメだった