イナズマイレブン

□お父様、彼女は悪い夢を見ているだけです
1ページ/1ページ

 ハサミで裂かれた服にヌッと手が入り込む。強引に体を間探る手つきには微塵の遠慮も感じることはできない。
 不快だ。
 私に跨っている幼さの残る彼を振り払おうと腕をあげると、先程服を裂かれた時に使われたハサミを首に突き付けてきた。

「主人に何をするつもりだ」

 6つも年下の小生意気な子供が、偉そうに口をきく。私は言い返したいのをぐっとこらえ、力を抜いた腕を床に落とす。
 私がこの邸の敷居を跨いだ瞬間から、私はこの神童家に仕える雇われの身である。神童の名を名乗る者の従順な使用人だ。目の前で権力を振りかざすも、充分にあどけなさを残す神童拓人様の従順な使用人。嫌が応でも彼の指示に従うのだ。ましてはこの状況下では、なおさら。
 私が抵抗の色を無くしたのを確認したこの小生意気な少年は、再びただただ強引な手つきで私の体を間探りはじめた。ブラジャーをずらしあげ、成長期を過ぎた乳房を揉み、噛みしだく。
 痛みに声をあげると、それを快感の声と誤認した彼はなおも恐らく初めてであろう愛撫を施す。すると痛みを通り越して何も感じなくなったきた。どれほどの力で噛んでいるのかと考えるだけで震えが起こる。それでもただ抵抗しまいと気持ちを集中させ、床に爪を立て気持ちの悪い愛撫が終わるのをただひたすらに待った。
 彼が顔をあげると唾液に混じり赤い液体が見て取れた。ああ、切れてしまった。千切れていなければ、それでいい。怖くて胸を確認出来ず、目を閉じると遅れてやってきた痛みと恐怖で涙が出た。彼は相変わらずの力加減で首筋を吸い、くびれを噛み、太股を手形が残るほどに揉んだ。
 愛撫の間、終始彼は一言も口にすることはなかった。獣のような息遣いと時折漏れるため息のような声だけだった。それがなおさら恐怖を煽りたてる。正しい愛撫も知らない彼が、ただひたすらに、本能の赴くままに私の体に触れ、痛々しい跡を残していく。血の混じる唾液が糸を引くたび叫びたくなるほどの深い恐怖が私の喉を絞めあげた。
 やがて愛撫に飽きたのか、私の股を開いた彼は、邪魔だと言わんばかりにハサミで下着を切ってしまった。

「ひっ…!」

 引きつった声をあげると彼はギロリと私の目を見て「声をあげるな」と無言の圧を加えた。
 初めての女性器を目の前に、彼の息遣いがより荒々しさを増すのが分かった。
 酷い扱いをされる。嫌だ。誰かが今ここに入ってきて、この現場を目撃して、この子供は施設にでも放り込まれてしまえ。
 泣いて父親の名前を叫ぶ彼の姿が簡単に創造出来てしまい、顔が緩んでしまう。それを見た彼は、バカにされたのだと感じ、一瞬で顔色を真っ赤な怒りに染め上げた。

「使用人の分際で、オレを笑うな!!」

 雷が落ちたような激しい衝撃を頬に感じた。もう一発、今度は逆だ。

「たく、と…さま……」

「謝れ!!オレを笑ったことを謝れ!!」

 張り手というよりも、殴るに近い。口内に血の味を感じながら、しどろもどろに謝罪する。

「はぁはぁ…」

 やっと手を止めてくれた時には、彼は殴りすぎて肩で息をするほどだった。
 視界が狭い、熱をもった頬でやけどしそうなくらいだ。腫れあがっ頬に涙が流れると、痛みでひりひりした。
 彼はそんな私の顔にふん、と笑い飛ばすと、もう一度露になった私の女性器に目をやった。
 そして躊躇いもみせることなく指を突っ込んでくる。

「いたい、いたい!!」

 彼がピアノをやっているため爪が短かったのが唯一の救いだろうか。それでも強引な指遣いに膣内を傷つけまいと、とめどなく溢れる体液がいやらしい音をたて、突然の異物にぎゅっと絞めあげてしまう。

「すご…」

 呼吸するかのように収縮を行う女性器に彼は生唾を飲み込んだ。もう片方の手は自身の下半身を擦っている。布越しでも膨らみは見てとれた。
 彼は私の中を乱暴な手つきでもう少し弄り回したのち、自分のベルトに手をやりズボンを脱いだ。
 子供のわりには欲望ばかりはそこらの男と同等だな。冷静にそんなことを思ってしまうくらいには、もう諦めていた。彼は私の足を抱えあげ、濡れた膣内にぐっと男根があてがわれた。

「っ、は…」

 彼は前屈みになって私の中に入ってきた。彼のため息のような声と息が顔にかかる。熱い痛みが身体中をかけ巡る。痛い。声を出したら叫んでしまいそうだったので、強く唇を噛んで耐えた。
 最後まで入りきったら、また引き抜いて入れる。それを馬鹿の一つ覚えのようにただ繰り返すだけ。そこにはお互いの意志疎通もなければ思いやりもない、彼の一方的な欲望を満たすための行為だけがあった。いや、果たして彼はこの行為に何か満たされるものがあるのだろうか。
 見たくもない忌々しい顔を盗み見る。彼は抜き差しに必死なようで、今にも爆ぜてしまいそうな苦しそうな顔をしていた。やはり子供だ。
 私はその顔から目を離し、早く行為が終わることに意識を集中させた。
 彼が達するのにあまり時間はかからなかった。身体を震わせたかと思うと、急いで高ぶりを引き抜く。

「んんっ…」

 くぐもった声を漏らしながら、精子が裂けた衣服にかかる。さすがに中に出すことはダメだと知っているようだ。自分で扱いて最後まで出しきる姿をぼーっと見ながら、私は彼の精を浴びた。
 射精を終えると早々に彼はズボンを上げた。すでにその表情に、先程まで女を襲っていた様子は微塵もない。無表情でベルトを絞めると、私の顔を一瞥し、ハサミを手に取り部屋をあとにした。

 扉が閉まる音を聞いた途端安堵する。腫れぼったい顔で天井を見上げたまま、じくじくと身体を襲う痛みを感じた。見なくとも私の惨めな姿よ。権力を振りかざされた前で何も出来なくなった自分を思い返すと笑みとともに涙が流れた。



「この仕事を辞めたい?」

 後日、私は神童家当主、本当の主人のもとに居た。

「はい。誠に申し訳ありませんが」

「何か不満があったのかね?改善しよう」

 簡単に辞めさせてくれない。素直に貴方のご子息のせいだと告げたいのを堪える。私は事前に考えていた嘘をつくことにした。

「実は使用人間でトラブルが……」

「お父様」

 突然の忌々しい声にハッと振り向く。目の前には、いかにも純粋そうな顔をした彼が微笑みをたたえ私たちを見ていた。

「おお、拓人。どうかしたのか?」

「お父様、その使用人は以前俺に、神童家に仕えることが出来て嬉しいと言ってくれたんです。辞めるなんて、おかしいです。」

「た、拓人様…?」

 その言葉の節々にはあの日を思い起こす雰囲気があった。身構えるようにメイド服の裾を掴む。

「お父様、彼女は悪い夢を見ているだけです」

 やはり、彼は呪いの言葉を吐いていった。
 後ろで満足そうに笑う当主の声。これからもよろしくお願いしますと笑うその顔には、決して逃がしはしない、笑顔の下の狂気がそう告げていた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ