イナズマイレブン

□泣き上戸の抱かれ上戸
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 長いテスト期間がようやく終わった。入学前から互いのテスト期間中は飲酒と勉強以外で会うこと禁止する約束を取り決めていたので、実に2週間ぶりの再会だ。
 拓人の家で一夜を過ごす話をしていたテスト最終日の今日、大和は実家から持ってきたワインで早々酔いが回りはじめていた。

「あー、ホント単位落としたかも」

 自棄酒に近い形でワインに手を伸ばす大和に、いい加減やめろと制止する拓人。

「んだよ」

 不機嫌そうに拓人を見る目はぐるぐる回っていた。

「もう過ぎたことなんだ、割り切れよ。もしかしたら落ちてないかもしれないだろ」

 そう言って水を差し出すと、大和はぐいっと飲み干す。こいつ今飲みたいだけなんだな。拓人の予想通り、もう一杯水を差し出すとグラスはすぐ空になった。

「なんか、この酒すっげー味薄いな」

「そうかな、こんなもんだよ」

 笑いそうになるのを堪えて答えると大和はふぅんといった表情でソファーに深く体を沈めた。まばたきを繰り返し、酔いで赤らんだ頬にあくびの涙が伝った。
 そんな眠たそうな大和に対し、拓人は先程からテスト期間中溜まっていた性欲を抑えるのに必死だった。大和から仕掛けて貰うつもりだったが、もう寝てしまいそうな彼に拓人は苛々していた。落ち着け落ち着けと口を濡らすようにワインを飲んでいると余計苛々が増す。拓人は酔うとせっかちになる性分なのだ。
 酔いのせいなのか、早く大和が欲しい拓人は大和の行動ひとつひとつに苛つく反面、些細なことで彼に激しく欲情しはじめていた。

「なんか、ねむ…」

「寝ないで、」

 思わず、目を擦る大和に顔を寄せ軽い口づけをする。

「…くれないか」

 囁くように告げる。

「ん…」

 軽く頷く大和はただ酔って適当に返事をしているだけなのだろうか。たまにはこんなやり方があってもいいだろうと思った拓人はもう一度大和に口づける。大和を誘うように甘くねっとりと、焦らしながら。
 早く酔いの覚めた大和に抱かれて朝まで体を重ねていたい。それが拓人の思い通りにはならず、大和は普段よりも下手に口づけに応えるばかり。酔い覚ましの水は効果がなかったらしい。
 たまには俺が抱いてもいいかな…。
 ふとそんな思いが拓人の頭をよぎる。自分の下腹部に触れると勃ちはじめているのが分かった。大和からを待つ余裕はなかった。

「大和、もう一回」

 大和の唇を甘噛みして、やや乱暴に舌をねじ込んだ。呂律の回らない舌と絡めて口腔の唾液を吸い上げた。

「んっ、ん…」

 拓人は息苦しさを訴える大和を無視して、太ももを彼の下腹部に当てた。すでに勃ちあがった熱を感じ拓人は心中で笑みを浮かべる。
 唇を塞いだまま下腹部を太ももで擦ると大和の声色があがりはじめた。苦しいと首を振って、わずかな隙間から絶え絶えの息継ぎと色のつきはじめた声が漏れる。
 更に拓人は大和のTシャツの中に手を入れた。風呂上がりのすべすべした肌を撫で回し、指先で尖りを突くと大和の体がびくんと跳ねた。

「んっ、んぁっ!」

 そのまましばらく口づけをしながら体をまさぐった。初めて一方的に大和を弄るにしては、よく大和は出来上がっていた。


「ふぅ…」

 ようやく拓人が唇を離すと、伸びた唾液がだらりと互いの顎についた。拓人はそれを指で掬って舐めとる。アルコールの味がした。
 休む間もなく大和の首筋に吸い付き、舌を這わす。強張っていた体が徐々に解れて行くのが分かった。拓人がソファに横たえるように大和に力をかけると、彼は簡単に倒れこんでしまう。

「今日、俺が入れるから」

 緊張で声が震える。それともまだ知らない興奮故か。はじめて発した言葉に拓人にある種の満足感を覚えた。涙目で拓人を見上げる大和は、嫌がる素振りも見せず素直に頷いた。
 拓人は大和の足を開く。中心の熱を確かめるように手で擦ると、恥じらう様子もなく大和が声をあげる。Tシャツを脱がし、下着ごとズボンも取り払う。

「んんっ…」

 拓人に見られているのを意識してしまい、既に固く張り詰めた大和の先端からは先走りが流れ、根元まで濡らしていた。
 拓人は初めて見る妖しい眺めに思わず喉を鳴らす。いつもは見上げているはずの人が、自分を見上げている。しかも、ただ見られているだけで愛撫を受けたかのように陰部を淫らに濡らして。
 拓人は大和の高ぶりをぎゅっと握り締めた。それだけで大和は身をよじった。そのまま上下にそれを扱く。

「はっ、あっあん!うぁ、ぁぁ!!」

 体をくねらせながら拓人の愛撫に声をあげる大和。その声は、酔いで気分が上がっていた拓人をさらに興奮させることになる。
 両手で根元からぎゅっぎゅと扱きあげるとたっぷりの先走りが溢れる。拓人は大和の先端に口をつけてそれを吸い上げる。

「あぁ!たくとぉ!!」

 腰を動かしながら大和の泣き声がする。泣き上戸故なのか、大和の緩んだ涙腺からはぽろぽろと快感の涙が零れていた。これではまるで抱かれ上戸だと、拓人は泣きながらも悦ぶ大和を見ながらそう思わずにはいられなかった。


「そろそろ解すか」

 拓人は大和が達する前に愛撫の手を緩めた。それでも片手で扱きながら、どろどろに濡れた指先で蕾を軽くつつく。

「あっ」

 驚いた大和はぐっと力を入れた。

「リラックスして」

 拓人に従い、息を吐き出し力を抜いた大和を見て、拓人はぐっと一本指を押し込む。

「やっ!んんっ…」

 力んで足を閉じようとする大和を慌てて押さえる。眉間にシワを寄せながら吐く大和の息から苦痛が聞き取れる。

「なんか、きもち…わるい」

「はじめはそうだな。もう少ししたら気持ち
よくなるから」

 頷く大和。

「あと、足持って」

 大和に自分の膝を抱えるように指示すると、大和は恥じらいながらも両膝を持ち上げた。拓人の言葉に従う大和は母親の言葉を聞く子供のようだ。思わず微笑むと、大和も訳の分からないまま微笑み返して来、拓人は不意打ちに顔を赤くした。
 足を抱えあげると自身の先走りが伝い濡れた蕾が、拓人の前に露になる。まるでローションを使ったかのようだ。そこに一本収まる自分の指に、吸い付くように蕾が収縮をしていた。
 ゆっくりと奥まで指を押し込む。

「うぁぁ…」

 呻くような声と、拓人の指の締め付けが強まる。

「ゆっくり息して」

 大和の呼吸に合わせてじりじりと埋め込んだ指がようやく根元まで入り込んだ。
 俺のはじめてもこんな感じだったなのかな。ふと拓人は思った。そしてあまり記憶に残っていないことを知った。あの時の自分は羞恥とはじめての感覚に頭の中がごちゃごちゃになっていた。今の大和もそういう感覚なのだろう。
 眉間にシワを寄せる大和は先ほどの愛撫の時とは違い、一分の快感も見せては居なかった。異物を入れられ苦しそうに、それでも拓人に言われた通り落ち着いた呼吸をしようと必死だった。
 拓人は入れたばかりの指を抜き出し、そしてまた奥に入れる。大和の熱を扱く手はまだ止めていないため、溢れる先走りは下に伝い良い潤滑剤になってくれた。
 中で指を曲げてみる。すぐに大和が声を荒げ強く締め付けられた。

「もうちょっとか…」

 入れるとは言ったものの、なかなか根気のいる作業だと拓人は思い知った。今でさえ大和の慣らしが不十分だと痛いと不満を漏らす拓人であるが、こちらはこちらなりに大変だったのか。それでも繋がったときの幸せと快感の混じった言葉では表せない感覚。それを大和にも感じてもらいたいと拓人は思った。


 今期強く時間をかけるとやがて大和は指一本に慣れ、指を足し始めると拡張は案外スムーズに進んだ。心なしか大和の声も上気して聞こえる。

「大和、どう?」

「まっまだ、きもちわるい」

 それでも不快感を口にする大和に、拓人はそうだ、と閃いた。
「今から大和の気持ちいいところ探してあげる」
 三本にまで増えた指で大和の中をじっくりと探る。と、一ヶ所膨れている場所を見つけ、押し込んで見る。

「やぁっ、あぁん!」

 拓人の予想通り大和の体が跳ね、上ずった悲鳴に近い声があがった。

「そこ、もう…触るなっ…ううっ」

「どうして?」

 訊いておきながらもう一度、今度は強めに擦る。

「ひゃあぁっ!やっ、やだ!」

 達したみたいに息を荒げ、思わず大和は抱えていた足から手を離し拓人の腕を掴んだ。

「気持ちいいだろ、ここ?」

 中を軽く擦ると、けいれんに近いくらい体を跳ねながら、大和はうんうん頷いた。初めてにしてはかなりの感度だと、大和の表情に拓人は喜ぶ。

「だから、やだ。あたま…おかしくなる」

「そういうセックスもいいぞ…俺が言うんだから、説得力があるだろ?」

 そろりと指を引き抜き、自分も着ている服を脱ぎ捨てる。下着の下できつかった下腹部が、ようやく開放され拓人は軽く息をつく。

「…そう、なのか?」

「今から俺が教えてやるよ」

 拓人は大和の脚を抱え直し、自分の先端を大和に押しあてた。一呼吸して、ゆっくりと中に入れる。

「ふっ…んん…」

「ちから、ぬいて…」

「いた、い…」

「大丈夫、だからっ」

 じりじりと奥に入れられながら、大和は痛みに耐える。内臓がせりあがる感覚に声が出ない。苦しそうに息を吐く大和に、大丈夫だと言うように拓人が頭を撫でた。
 そうされるだけで今まできつかった大和の中が一変、拓人を受け入れるように大和の力がするりと抜けた。大和は拓人を見上げる。点けっぱなしの部屋の明かりに、興奮で赤い顔をした拓人が眉を寄せている。その目はじっと大和を見ていた。

「全部…入ったぞ」

「うん…」

 お互い口にしなくても、体だけでなく心が繋がっているのだと感じる。大和を気にしながらゆっくり動き出す拓人。

「あっ、」

 無意識に出る声に大和は口を押さえた。今まで痛がっていたのに、快感が生まれていたことに気付かされる。
 拓人は大和の肩に手を置き、ぎりぎりまで抜いた自身を再び深く奥に入れる。波紋のように身体中に広がる甘い痺れに、大和の体はがくがくと震える。

「きもちいい?」

 言葉にならず、こくこく頷くしかできない大和。大和は痛みが今までにない快感に変わっていくのを感じた。
 拓人は、だんだん動きを早め、息を荒くしていた。大和の最奥に入り込み、抜き出す度に大和に力を入れられ、その収縮に拓人は新たな快感を覚えた。

「あっ、あ!ん、た…たく、とぉっ!」

 泣き声のような喘ぎをあげながら、愛する人の名前を呼ぶ。

「はっはっ…やまと、」

 それに答える拓人。目が合い、旋律を速めながら唇を重ねる。

「んっ、はぁ…きもちい…た、くと…!どう、しよ…っ」

 息継ぎの合間に訴えるのは涙を流すほどの快感と、自分がおかしくなっていく不安。

「はぁっ、ん…やまと…おれを、しんじてっ…」

 ぎゅっと大和を抱きしめると、耳元に大和の熱い吐息が触れる。汗ばむ体からはアルコールと石鹸の混じりあったにおいがする。
 大和も拓人を強く抱きしめる。自分よりもひとまわり小柄で、いつも自分に泣きながらすがると思っていた拓人は、案外自分と変わりのない体つきをしていて、同じ雄だと気づいた。

「あっ…あんっ、たくと!んっ、も、でるっ!あっ、いくっ…イクッッ!」

 耳を舐められ、耳たぶを噛まれ長く甘い悲鳴をあげた大和は、自分の腹に精をまいた。すぐに中に熱いものを感じ、拓人が中で達したのだと思いながら、大和は酔いと慣れない行為から強い眠気に襲われた。

「おやすみ、大和…愛してるよ」

 「俺も」と返す気力すら残っていなかった彼は、代わりに汗と涙で濡れた顔を拓人にすりよせる。電気がぱちんと切れて、静かな夜が訪れた。


 近所の子供が遊ぶ声で目を覚ましたのは大和だった。今日は土曜日だったと安心して、大きなあくびをする。と、自分の上に覆い被って寝息をたてている拓人に気づきハッとした。
 昨日自分は何をした?
 脳裏に残るうやむやな記憶は大和にとっては信じがたいものであった。二日酔いで頭が痛い。それとも別のことで頭が痛いのか。
 そんなワケはない。しかし、それを証明するかのように大和の節々を襲う痛みに、思わず呻き声をあげた。

「ん…やまと?」

 大和の上でごしごしと目をこすりながら目覚めた拓人もハッとして大和から飛び退く。

「な、なぁ…拓人…き、昨日…」

 拓人のリアクションで夢ではないのだと確信しながらも、大和はソファーに横になったまま昨夜のことを訊ねる。

「……大和、かわいかった」

 それだけ告げると、恥ずかしさに耐え切れず拓人は風呂場へ走っていった。

「おい!待て!!まだ話は…っ!」

 体を起こそうとすると、初めてな上ソファーで寝たためぼきぼきと関節が悲鳴をあげた。その痛みに大和は再び呻いた。

「可愛かったってどういうことだよ…くそっ」

 可愛かったで真っ先に思い出したのは自分のあられもない声で、大和はクッションに自分の顔を埋めた。
 これからはアルコールを控えようと肝に銘じて。



9月1日 ハッピーたくやまの日!

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