イナズマイレブン

□無自覚の依存
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 練習を終え制服に着替えた部員たちがぞろぞろと部室から出ていく。そんな中一人ユニフォーム姿のまま歩く。広い部室の戸締まり確認は、キャプテンである俺の仕事だ。

「神童キャプテン、手伝いますよ」

 剣城がいつものように俺に声をかけた。一足早く着替えを終えた剣城は、こっそり付き合いはじめてから毎日のように俺と一緒に戸締まり回りに付き合ってくれる。

「ありがとう、剣城」

 素直に喜ぶとすぐ照れる剣城。
 ハードな練習を終えた部員たちは早く自宅に帰りたいと、毎日一緒に戸締まりをする俺たちを詮索することなくお疲れさまと手を振るのだ。
 連日の部活で普段剣城と一緒に居られない俺にとって、面倒だとも思っていたこの戸締まりの時間がどうしようもなく楽しい時間に変わった。


「今日の練習中、俺のことずっと見てただろ?」

 俺を盗み見るような視線を思い出して思わず笑う。

「えっ、そ、そんなことないです」

「剣城、隠し事はしないって約束しただろ?」

「っ…そういうのズルいですよ」

 剣城はむっと顔をしかめる。
 隠し事をしない約束を提案してきたのは当時俺と霧野との関係に悩んだ末に、泣きだしそうなほど追い込まれた顔をした剣城の方からである。それ以後、ことあるごとにこの約束を振りかざしてくる俺に、きっと剣城は心底後悔しているだろう。
 早く言いなよ、と剣城の眉間に人差し指を押す。
 だが、俺にしてみればちゃんと約束を守ってくれる剣城が愛くるしくて仕方がないのが本音だ。
 剣城は俺の手をそっと払いのけ、顔を反らし口を開いた。

「今日の神童キャプテンが、ずっと俺のこと…見てたんで…その…気になって」

「剣城…」

「神童キャプテン…その、俺…キャプテンに見られてるって思うと…恥ずかしくて、その…」

 しどろもどろになる口調に比例して、耳まで赤くする姿にいてもたってもいられなくなる。

「ちょっとかがんでくれないか?」

「えっ?」

 早口で告げた言葉を聞き直してくる剣城の首に腕を回し、思いきり背伸びをして、まぬけに開いた口を塞ぐ。
 驚く剣城に、俺は強く抱きついた。

「はっ…あのっ、神童キャプテン…!?」

「京介…どうしよう。好きだ」

「う……た…たく、と……さん?」

 ワケが分からない様子で俺に腕を回してくる京介。
 俺の方がおまえに見惚れていたんだな。
 自分で気付かなかっただなんて、他の部員に勘づかれかったらいいんだが…

 ああ、どんどん京介にはまって行く自分が分かる。京介を誰よりももっと深く知りたい。
 シャワーを浴びた京介の首筋に顔を埋める。
 その首筋からは俺を酔わせるには充分なほど、危険で甘い幸せの香りがした。



9月10日は拓京の日!
(拓→京っぽいよ…!)

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