イナズマイレブン

□君に恋する数式
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「い……井吹くん?」
 もぞもぞと体を這うように動く手に真名部は嫌な予感を覚える。
「真名部、いいだろ」
 荒い息遣いで、井吹は真名部のジャージの中に手を突っ込んで、すべすべの肌を撫でていた。
「すげ、全然筋肉ついてねぇ」
「ちょっと……!!」
 井吹に首筋を吸われる。甘い痺れが真名部の体を走り抜けたが、負けずと井吹の下で暴れた。股を閉じようとするが、しかし井吹の体が邪魔で敵わない。
「やめて……ください、井吹く……アッ!」
 自分のものとは思えない声に真名部は両手で口を押さえた。井吹の手中に収まった真名部の中心は、初めて尽くしの体験にもう強く反応を示していた。
「いぶき……く、ん……」
 やめてと首を振るが井吹はお構いなしに真名部を扱く。真名部は口から飛び出そうな恥ずかしい声を抑えるだけで必死だった。大きな手がすっぽりと真名部の雄をさすって愛撫する。先端から出る熱い雫が井吹の手を淫らに汚しているのだと思うと真名部の雄は更に感度を増し、そして固く張りつめた。
「これジャージ汚れるな」
 井吹は体を起こし、真名部のズボンを引きずり下ろした。今にも欲望を吐き出しそうな男根がぷるんと外に飛び出し、真名部はぎゅっと目を閉じた。
「んんっ、やだぁ……」
「こんなに勃ったの初めてか?」
「い、いやです……言いたくないです……はっ、あ……あぅ」
 再び井吹が手淫を始めると、真名部の口からあられもない声が漏れる。慌てて口を押さえる真名部に井吹が手を動かしたまま言う。
「その声、すげぇ燃えるから、口塞ぐなよ」
「んっ、や、やです……!」
 指の隙間から切れ切れの息遣いが漏れる。この短時間で初めてキスをされたばかりか、姿を変えた雄すら支配されている。
 初めて好きと言われて、真名部はもう目の前のことを何も冷静に分析できずにいた。井吹の体を足でぎゅっと挟んだまま動けない。
 いつの間にかズレてしまったメガネ越しに映るピンぼけした井吹は、自分と同じように乱れた息遣いで真名部を弄り、それは獣を彷彿させた。何もできない自分はまるで捕食される獲物のようだ。
(こ、こんな筋肉バカにっ……!)
 擦る度に溢れる淫らな液の存在は、部屋に響くにゅちゅにゅちゅというやらしい音で分かる。鼓膜を揺さぶる水音だけでぞくぞくと真名部の背筋は震えた。そして彼は大人しく身を委ねてしまえば井吹が容易く快感にいざなってくれると気付く。しかしそれはなんとしてでも阻止せねばとも思っていた。
 井吹が真名部のメガネを外す。真名部に気を遣ってか、異様に顔を近づけた井吹と目が合う。真名部が第一印象で怖いと思った瞳が視界いっぱいに映り、思わず顔ごと目を逸らす。
「俺のこと嫌い?」
「そ、それはさっき……す、好きだと言ったじゃないです、かっ……!」
「怖がっただろ、今」
「うっ……そ、それは」
「この目は遺伝だから、安心しろよ」
 図星を突かれ言葉を詰まらす真名部に、井吹が真剣な顔で告げる。それが皆目見当違いの言葉で真名部は思わず吹き出した。井吹は何か間違ったことを言ってしまったかと首をかしげた。
「井吹くん、そういう問題じゃないですよ」
 真名部が抑えていた手を、井吹はそっとどかした。案外簡単にどかした手の下には、井吹が初めて見る真名部の笑顔があった。
「……やっと笑った」
「え?」
 ちゅっとキスをされて真名部は目を瞑る。そういえばなかなか笑わない自分の方こそ怖いと思われていたのかもしれないと、真名部は暗い視界の中で思う。
「あと、真名部、おまえさ……」
 井吹は自分のズボンを下ろしながら続ける。
「まだ俺に「好き」って言ってねぇからな」
「んなっ……! だったら井吹くんだって、一緒じゃないです……ひあっ!?」
 真名部の雄に何か熱いものが触れる。それが井吹のものだと気付くのには少し時間がかかった。二本の昂りを握る井吹はぎゅっとそれを扱く。
「ひあぁっ!!」
 どろりと熱い他者の愛液が垂れてきた。気持ちよさそうに息を吐く井吹を見上げてこの人も自分と同じように気持ちがいいのかと思うと、感情の共有をしているみたいで、真名部の中に幸せという気持ちが芽生えた。
「も、もう少し、優しくっ…ん、できないんですっ!?」
「はぁはぁ、悪い……俺が、ガマンできねっ……」
 真名部よりもはるかに切羽詰まった井吹の声に、真名部はドキドキと心臓の鼓動を速めた。それはすぐ快感を示す淫らな液になって現れて、思わず呻く。
 扱きながら腰を振る井吹につられて、真名部もぎこちなく腰を動かしていた。先走りで濡れた熱棒がぬちぬちと音を立てながら亀頭を擦り刺激を受け合っていると、次第に二人の意識も曖昧になってくる。
「真名部も、いきそう?」
 呼吸の合間に井吹が訊ねる。ぽたぽたと汗が真名部の顔に落ちた。彼の限界を真名部は悟る。
「ん、ぁ……はいぃ」
 涙声で頷く。本能に逆らえず、ぼやけた視界の、表情の分からない井吹に真名部はその身を委ねる。
 井吹は手淫を速めて昇りつめてゆく。真名部は思わず井吹の体に腕を回して、苦しそうな吐息に僅かな快感を混ぜてよがった。
 井吹が真名部の髪を掴み、その中に顔を埋め熱い吐息混じりに低く喘ぐ。
「はあっ…ぁあ! はっ、まなべっ、まなべ……!」
「ひあぁ、ああ……いぶき、くん! もっ、う…や、だめえぇぇえぇ!!」
 体が大きく跳ねて、真名部は自らの腹に射精した。少し遅れて、井吹がその上に新たな精を吐く。
 射精後、何も言葉を紡げない二人は唇を貪りあった。ぐちゃぐちゃに濡れた井吹の手が、真名部の髪を掻きむしった。真名部も井吹の頭を押さえつけて欲の赴くまま彼を堪能する。最後に力いっぱい抱きしめ合って、あとに残った互いの鼓動を交換した。
 呼吸がゆっくりと元通りになっていくと、思考も段々と落ち着いてきて、高揚した気分も急速に冷めた。
「……い、ぶき、くん……」
 先に口を開いたのは真名部だった。いわゆる賢者モードに突入した真名部は真っ青な顔をして、覆いかぶさる井吹の肩をトントンと叩いた。
「い、今…おまえの顔が見れない……」
 井吹も同じような状態のようだ。抱きしめたまま真名部から離れようとしなかった。
 これからどうすればいいのか……真名部はこの世の終わりだと思った。まさかチームメイトと関係を持ってしまうとは、なんていうことだ……。
「真名部……」
 しばらくして、今度は井吹が口を開く。
「なんですか……」
「好きって言ってなかった……」
「!! なななな…!」
 慌てる真名部に俺がだよ、と井吹が付け加える。本人にそんなつもりはないだろうが、遠まわしに真名部も好きと言ってくれと言っているように思えて真名部は困った。
(筋肉バカに限ってそんなことはないと思いますが……仕方ありません)
「ぼ、僕も井吹くんの……」
「俺が勝手に言い出したことなんだ、おまえには悪かったと思ってるよ」
 井吹は真名部が言い出すよりも先に体を起こした。ズボンを上げて、今にも帰りそうな井吹に真名部は慌てて体を起こした。
「じ、自分勝手は許しませんよ! ぼ、僕の気持ちが…まだじゃないですか!! 僕も井吹くんのことが、すっ、好きになってしまったんですから!」
「真名部……」
 目を丸くする井吹に真名部は恥ずかしくなって口を抑えた。
 無我夢中の告白だ。顔が熱い。手さぐりでメガネを探していると、井吹にメガネをかけられた。
 へたくそなかけかた。真名部の視界にピンぼけした井吹が映った。
 でも今はこれくらいの視界で丁度いい。井吹の嬉し泣きなんて見たら、こっちまで泣き出しそうになる。
(やっぱり君は僕が今まで出会った中で一番の筋肉バカだ……)
 隠した手の下で真名部はこっそりと微笑んだ。
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