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□すてきな時間
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※銀八先生4巻ネタが含まれております。沖神少し
2月23日はたまさんの誕生日。この日のために、俺はたまさんの好きな色やら物やらを調べてきたのだ。
しかし調べたものも、プレゼントが決められず、お茶に誘うことにしたのは正解だったのかもしれない。
朝から彼女の周りにはたくさんの人が集まっていて、とても俺が渡しに行けるような状況ではなく、いつの間にか放課後になっていたのだから。
「た、たまさん!」
「何でしょうか」
「おおおお茶でもしませんか?」
「はい分かりました」
放課後、ひとりで歩いていた彼女に声をかけたところ、あっさりOKしてくれた。
夕方からバイトがあると言っていたので少しの間だけだけど、2人で過ごせるんだ。
そう待ち合わせの時間まではウキウキで、途中にあった雑貨屋でプレゼントを買ったくらいだ。
しかし、喫茶店に着いてからというもの会話が続かない。ネタも思いつかない。だから会話も続かない…という無限ループにハマってしまった。
「た、たまさんは卒業したらどうするんですか!?」
何か話そうと考えた末、卒業間近のこの時期に出てきた言葉がそれだった。聞いてからすごく悲しくなったけど、女優を続けたいと言った彼女がとても自然に笑っていたから聞いて良かったな、と思う。
元はといえば、彼女が役者だったからこうして出会うことができた。もし銀魂高校の近くで映画の撮影がなかったら、役者がちゃんと来てたら、オーディションのみんなの出来が良かったら、彼女に会うことなどできなかったのだ。
「あの、山崎さん」
「どうしたの?」
「そろそろバイトの時間なので帰りたいのですが…」
そう言われ時計を見てみると、たまさんのバイトが始まるまで30分を切っていた。沈黙が多かったせいで、たまさんとあまり話せてない気がする。
ごめんと謝り、喫茶店を出たところで、さっき雑貨屋で買ったプレゼントをあげた。
「ご馳走になったのに、プレゼントまでくれるのですか?」
「だって今日、誕生日でしょ?プレゼントくらいあげるよ」
「では山崎さんの誕生日を教えてください」
「2月6日。過ぎたばっかりだけど…」
苦笑しながら言うと、来年はちゃんとプレゼントを用意してお祝いします、と言われ泣きそうになった。
彼女は無意識だったのかもしれないけど、俺は来年も会うことが出来るとしっかり意識している。
この日から卒業式まではすぐに過ぎ去った。
彼女は女優の道へ、俺は大学へ進み、もう会うことはなく、約束も忘れ去られるものだと思っていた。
「ザキ、誕生日おめでとう!!」
あの日から約一年、俺は去年のように、元風紀委員のメンバーもとい元クラスメート達に祝われている。
そしてたまさんからの連絡は、ない。
「あ、そういやザキに言うことあったんでさァ」
「なんですか?」
「神楽が『たまがジミーに用あるらしいアル』って。たぶん連れてくる」
「い、いつ頃来るんですか!?」
聞いた時に、ちょうどインターフォンがなった。
沖田さんが取って、鍵あいてると言ったので、きっと来たのはチャイナさん。
「久しぶりアルナ」
「俺たちは毎日会ってますけどねィ」
「黙れヨバカ!」
ギャーギャー騒いでる2人は放っとき、その後ろを見れば、懐かしい髪の色。
「おめでとうございます」
そう言って笑った彼女の笑顔は、あの日と変わらずきれいだった。
「たまさん!」
「はい」
「す、すごく嬉しいです」
好きとは言えなかったけど、今は彼女が約束を覚えていてくれたことに頭がいっぱいだから、もう少し後になったら俺の気持ちを伝えて、そしてたくさん笑いたい。
すてきな時間
(す、ストロー使いますか!?)
(『す』って何回目でさァ)
(今ので38回アル)
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過ぎた…山崎もまたも誕生日過ぎた…
たまは製造日ですけど←
2月中ってことで大目に見てください;
どうしても祝いたかったんです、はい。