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□今日もまた
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先輩×後輩パロ
もはや名前が一緒の別人
廊下からはきゃあきゃあと女子の騒ぎ声が聞こえてくる。
これは毎日放課後になると起こる現象で、やつがくる合図。その前に帰ろうと思っていたのにHRが長引いたせいでもう逃げ切れない。
今までの経験から、この合図があると、いくら急いで教室を出ようとも、私の目立つ髪色で見つかってしまう。
「チャイナァ」
「チャイナじゃないデス」
「お前、剣道部に入りなせェ」
入学初日、私はこの男と戦りあい、その時に人並みはずれた運動神経を買われ、剣道部に誘われた。
私だって入れるものなら入りたいが、生まれつきの弱い体はそうさせてくれない。所詮はドクターストップ。私がどうこうできるものではない。
しかし沖田先輩に、入れないと伝えてると理由をしつこく聞き、体が弱いと伝えると剣道で強くすればいいと、諦めずに私を誘い続けている。
「何回言えば気が済むんデスカ?」
「入るって一回いえば」
それはつまり私が剣道部に入るまで気が済まないということか。
この先輩、沖田総悟の顔は良いが性格に問題がある。人前ではそうでもないが実は超ド級のS。でもそれは私が言えることではない。
「武道場行ってくるから先帰ってていいヨ」
「じゃあバイバイ」
「うん、また明日ネ!」
そう笑顔で友達を見送って、先輩と武道場へ向かった。しかし入ると決めた訳ではなく、体が弱くて体育もできない私が、唯一暴れられるのが武道場だから。
病弱な私が実はとんでもない暴れ者だと知っているのは目の前の先輩とパピーと知り合いで先生の銀ちゃん、剣道部部長と副部長、そしてクラスメイトの眼鏡とその姉の6人だけ。
武道場の扉を開け中へ入ると、邪魔されぬよう鍵を閉め即座に戦闘態勢をとる。
「今日こそは入ってもらいまさァ」
「嫌って言ってんダロ!迷惑アル!」
素に戻ると口調も変わる。友達の前で使わないのは、通じづらいし引かれるから。そしてコイツに素を出すのは心を開いているとかではなく、友達じゃないから。
それと、引かれたら剣道部なんて誘われなくて済む、というかすかな期待もあったのだがそんなことはなかった。
「どうしてそんな剣道部に入れたがるアルか」
「そんなのチャイナが強いからに決まってんだろィ」
私が強い、そんなこと知っている。それでも試合に出られないんだから入っても意味ないって分かってるのか。
運動神経は良いのに体が弱いなんて、宝の持ち腐れもいいとこだ。
「強くたって意味ないネ!!お前に私の気持ちは分からないアル!!」
ちょっと感情的になって殴った。彼のきれいな顔に傷を付けるのは気が引けるので腹部に一発。それから2秒ほど経ってからしまった、と思った。
痛がりもせず突っ立って笑っている先輩が怖い。
「俺を殴るなんて、良い度胸してるなァ」
「い、今のは勢いだったのヨ」
「勢いで人を殴って良いなんて誰に教えてもらったんですかィ?」
笑いながら問う先輩は口で笑ってるのに目は笑ってない。
「…ごめんなさいアル!!」
とりあえず謝らないとヤバいと思った。
そしたらその笑顔のまま許してやると言ったが、絶対許してない。だってほら、拳作って殴る準備万端じゃん。
絶対殴られると思い目を瞑る。許すがこれなら許さないと答えられた日は、私の人生が終わる日だと勝手に決めた。
殴るなら殴れ、先に手を出したのは私だ。もう準備は出来ている。殴られた次の瞬間にお前の顔を殴る準備が。
しかし拳は降ってこない。その代わりに先輩のあ、と言う声が降ってきた。
「どうしたネ?」
「いや何でも」
「そうアルか」
回れ右をしてふぅ、とひと息ついたのもつかの間、後ろからの邪悪な気配に悪寒が走る。
「いだっ」
気づいたときには沖田総悟のチョップが直撃。
今日は許されたと思ったのに、やっぱり許してないじゃないか。そもそも許されたと思った私がいけなかったのか。
「こんのクソヤロー!!」
「テメーが先に殴ったんだろィ?それに先輩には敬語使うもんでさァ、クソガキ」
「お前に敬意なんて持ってないのに敬語なんか使えるかヨ!!」
私と先輩のこめかみに、ぴきっと血筋が入る。それからすぐ戦闘に入った。
怒りもあるが先輩とのケンカは楽しいほうが大きい。だからも身体のことなんか忘れて倒れてしまう。
でも私はそれでもいい。倒れたはずなのに外傷がないのは先輩が支えてくれてるからだと知っているから。保健室へ運んでくれてるのも、目が覚めて天井の次に見るのも、先輩ならばそれで構わない。
今日もまた
(目が覚めたら先輩がいました)
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分かりづらいと思いますが沖(→)(←)神でした。
基本神楽ちゃんは沖田を先輩呼びです。