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□幼なじみは婚約者
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『わたし、おっきくなったらそーごのお嫁さんになるアル!!』
『じゃあ頑張っておっきくなりなせェ』
『うん!そしたら結婚してくれるアルか?』
『もちろんでさァ』
…という遠い昔の夢をみた。
結婚すると宣言していたガキは幼なじみの神楽。現在中学2年生で俺とは4つ離れている。あの頃は小学1年生ながら男の見る目のある女だった。
そんな今思えば幸せだった時代の夢から覚めたのはここに居るクソガキのせい。
「総悟ォー!!!早く起きるネ!!」
「起きてるからどっか行けクソガキ。なんでテメーがうちに居るんでィ」
「ミツバ姉がお弁当作ってくれる言ったからアル。今日部活なんダロ?」
「あ、」
昨日でテストがおわったことを忘れてた。
今日からは午前も午後も、みっちり授業がある。
学校なんてサボりたいのは山々だが、あと2、3回サボれば確実に出席日数が足りなくなる=流石の銀魂高校でも単位不足で留年ということになる。姉に心配を掛けぬよう、それだけは免れなければ。
何も考えなくていい目の前の中学生がうらやましい。
「お前はいいよな、義務教育で」
「は?急にどうしたネ?頭おかしくなったアルか?」
夢で見たあの頃は素直で可愛かったのに、どうしてこんなになってしまったのか不思議で仕方がない。
「高校生は色々と大変なんでィ」
「そういえば総悟って彼女何人アルか?」
俺の返答を無視した挙げ句、いきなり質問された。昔からコイツは唐突だったが、今のは1、2を争う唐突さだ。
聞き方からして複数彼女が居る設定になっているし、聞かれる理由がわからない。そして、それを知ってどうするというのか。
「何でそんなこと聞くんでィ」
朝起きたばかりの脳みそでは、意外に冷静な判断だった。
よく動いた俺の脳みそ。
「総悟には彼女が5、6人居てもおかしくない言ってたアル」
それで確認したかったのヨ、と神楽は言い、俺はそういうことかとひとりで納得。
だが、その予想は掠りもしないで外れている。現在彼女は5、6人どころか誰1人としていない。
てか5、6人ってどんなイメージつけられてんの俺。
「彼女なんて1人もいねーよ」
「ふーん。で、本当は何人アルか?」
「いや本当だから」
まさか疑われるなんて思いもしなかった。
そもそも俺に彼女が居るなら帰ってきたらなぜか家にいる神楽はすでに会っているに決まっているのに。
「俺が部屋に女連れ込んでんの見たことねーだろ?」
「それもそうアルナ…」
「そういうお前はどうなんでィ」
神楽がモテるのはよく知っているので聞いてみた。
彼氏が居ると答えた暁にはそいつをぶっ飛ばす…なんて事はしないが、ひとつ忠告をしにいこうと今決めた。
だけど神楽にそういう男は居ないようなので無駄な時間と体力を使わなくて済むようだ。
「彼氏のひとりも居ねーのかィ」
本当は居なくてよかったのだけれど、こいつの前でそんなことは言えないので、そう言ったのだが、俺は神楽の純心をなめきっていた。
「別に総悟のお嫁さんになるから平気アル」
「まじでか」
「お前、男なら約束は守れヨ」
神楽も約束を覚えていたことが嬉しくて抱き締めようとしたら、ノックの後、部屋のドアが開く。
反射的に離れた俺らに、遅刻するから早く支度して降りてきてと言った姉はにこりと笑って扉を閉めた。
「チャリの後ろに乗っけてってやりまさァ」
「いいアルか?」
そう首を傾げて聞いてきた神楽に、もちろんと返事をし、支度を始めた。
「神楽ァ、学校ついたら友達に俺はお前のフィアンセだから彼女はいない、って言いなせェ」
「フィアンセって何アルか?」
そう訪ねてくるのは予想の範囲内だが、婚約者だと教えたら、絶対に言わないので意味を教えるつもりはない。
「お前そんなことも知らねーのかよ。これだからガキは困るねィ」
はぁ…とわざとらしくため息をつけば、意味を知っていると嘘をつくのを俺は知っている。
案の定、ヘタクソな嘘をついてきた。
「べ、別に意味くらい知ってるネ!アレだろアレ」
「そうそうアレでィ。絶対言えよ?」
「しつこいアルナ」
分かっていると返ってきた言葉に安堵し、シャツの袖に腕を通した。
きっと神楽は中学で大変なことになるのだろう。
幼なじみは婚約者
(総悟は私のフィアンセだから彼女なんていないアル!)
(フィアンセって婚約者のこと?)
(…そ、総悟のアホォ!!!)
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フィアンセて…デスノか(笑)
松田がザキみたいで月とみさの次に好きでした←
幼なじみ設定は3Zとか幕末より仲がよいと萌えます。