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□勝敗の行方
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自らの夢のため、宇宙へ飛び立った神楽は、2年の修行を経て今朝江戸へ戻ってきた。日除けの傘を差して万事屋へ向かっている途中、公園の前で足を止める。

たびたび乱闘が起きていたその公園は、同じ場所だと思えないほど綺麗に整備されていた。

それは乱闘騒ぎを巻き起こす張本人たちがいなくなって平和な…と言うか普通の公園に戻り、整備しやすくなったためであろう。




「懐かしいアルナ」




異国の服を纏った独特の髪色は、昔と変わらぬ口調で話す。きれいに整備されてはいるものの、遊具などの位置や形に変わりはない。




「きれいですね」


「そうデスネ」



後ろから不意にかけられた聞き覚えのない声に、丁寧に答えたが、そうしてからそれが自分に向かって言った言葉だと気づいた。

背も髪ものび、昔とはずいぶん雰囲気が変わっている。そのせいか、男の人に声をかけられることは何度かあった。あったのだが未だになれず、さっきのような反応をしてしまう。




「えーと…」


「別に気にしなくて良いよ。こっちも急に話しかけたし」




ごめんね、と笑った男を見て、時たま見せるアイツの笑顔にそっくりだと思った。

ほんの少しの期待を持って寄ったこの場所にはいなかったけれど、なんとなく髪色や顔立ちが自分の記憶の中のアイツに似ている。




「ぼーっとしてどうしたの?もしかして誰か待ってる?」


「待って…」




ない、と言う言葉は、数十メートル前に現れた亜麻色の姿によって失われた。昔と変わらぬアイマスクを片手に、こちらへ向かってきたアイツも、私の存在に気付いたようで、少し立ち止まった。しかし引き返す理由もないのだろう、またこちらへ向かってくる。




「戻ってきてたんですねィ」


「こっち着いたのはさっきだけどナ」


「へぇ、じゃあ万事屋に向かう最中ってことか」


「ちなみに知り合いに会ったのはお前が1番ネ」




自分が思っていたよりも遥かにスムーズな会話が続き、内心驚いていた。

昔は話しても、どちらかが憎まれ口を叩き、喧嘩を始めていたのだから、こんな会話が進むことなんかなかった。続いたとしても、それは戦闘に疲れて2人座っているとき。

こんなにあっさり会話したことなどなかったはずだ。


それに真選組の連中には、宇宙へ行くことを伝えずに飛び立ったので顔を会わせ辛かった。それは沖田に会ってしまったら、せっかく固めた決意が崩れ落ちてしまいそうだったからで。でもその後に銀ちゃんや新八が伝えてくれたと思う。




「お前、変わったな」


「お前だって変わったアル」




背も伸びたし、童顔だったけど、今はずいぶんと大人びている。髪色は自分が記憶していた色よりも鮮やかで少し明るかった。

しかしそれは自分にだって言えることで、髪が伸び、貧乳と言われ続けてきた胸は、見事なまでに成長し大きくなっている。

相手からしてみれば私自身だって変わっているのだろう。




「で、そちらさんは?」


「は?」




だからそいつ。と、雑に聞いてきた沖田は、さっき出会ったばかりの隣の男を示す。




「この人は…」




そういえば名前を聞いていなかった。

会ったのはついさっきだし、会話もそんなしていない。何よりその最中に名前を聞く必要性を感じかなったので、そのまま会話を続けていた。


どうしよう…と困っていると、それに気づいたのか、隣の男が口を開いた。




「彼のこと待ってたの?」


「そうに決まってんだろィ?」


「な何いってるアルか?」




全くもってその通りなのだが本人が居る前ではそんなこと言えるわけがない。




「図星ですかィ?」


「ちっがうアル」


「はぁ、俺ァお前の帰りをずっと待ってたのに」


「嘘ダロそれ」




久し振りすぎて最初はどもってしまったが、こいつの言葉を素直に受け止めてはいけないのだ。昔からいつもそんな態度で、そして自惚れさせられたのだから、信用する方が難しい。




「ひでぇもんでさァ」


「信用出来ないようなことしてた自分が悪いアル」


「昔は、だろ」




今は違うような口ぶりに少し心が揺れる。しかしここで信用するような私じゃない。私だって成長したのだから。




「何アルかソレ」


「まんまだけど?」


「じゃ、銀ちゃん達が待ってるから帰るアル」




オニーサンもさようなら、と今まで空気化していた男に言って、万事屋へ向かう。オニーサンはともかく、バカなんて相手にしてられるか。




「チャイナ待てよ」


「…オイ聞いてんのか」


「2年で耳も遠くなったのかィ。まぁクソだから仕方ない『誰がクソアルかァー!!』




…昔だったらこうなってたハズだ、確実に。でも今の私は大人の女だから、そんな軽い挑発になんて乗ってやらない。

内心は勿論のことながら、ものっすごいムカついている。だがここで反応してしまったら昔と同じじゃないか、と言われるに決まっているので、こめかみに血管を浮き出しながら我慢。




「さっきの本気なんだけど」


「なんなんだヨお前」


「本当にずっと待ってた」




くるりと振り返ると、おでこも鼻もぶつかりそうな距離に隊服の黒。

びっくりして顔を上げると、まっすぐな赤い目にぶつかった。

昔とは全然違う真剣な顔をされては、信じるしかなくなってしまった。今のは本気なんだと、そんなこと私にだってわかる。




「ま、じでか」


「本当ひでぇよお前は」


「…なにがネ」




そう聞けば、昔言ってたことも本気なのに信じないだとか、勝手にいなくなるだとか、まだ何も伝わってないだとか、たくさんの理由が返ってきてびっくりした。

信じないと言われても、昔の態度じゃ本気だなんてわからない。

そうは思うものの、沖田が表面上で本気をみせなかったのにひとつ心当たりがあった。

それは一番最初に沖田が気持ちを伝えてきたとき。私は気なんてなくて冗談かと思い、適当に流してしまった。

いつか、Sは打たれ弱いと言っていた気がする。今思えばこうなったのは全部私が子供だったから。




「どう責任とってくれるんでィ」




どうやら私のせいで、ずいぶんと人生計画を崩されたらしい。そんなの人生計画なんて立てた方が悪いんだ。人生思い通りにいくわけがないのだから。それを私のせいにしないてほしい。




「それはお前の計算ミスネ」


「いーや、全部お前のせいだ」




おかげで婚期も遅れちまった、と意味の分からぬ言いがかりをつけられた。婚期って…まだ二十歳が何を言っているのか。それで遅れてるなら銀ちゃんはどうなるんだ。




「だから俺と結婚しろ」




…結婚?いくらなんでもこんな急には無理だ。私帰ってきたばっかだし。あぁだからこんな変な幻聴聞こえてきたのか。江戸も随分と変わったものだ。




「幻聴じゃねーよ」




少し怒っている。けど今のは私が悪い。さっきひどいと言われたばかりなのに本気にしなかった私が。

そして私は気づかぬ内に墓穴を掘ってしまってたのである。




「急には無理ってことは、結婚自体はOKってことだよな?」


「うっ…」


「どうなんでィ」




ニヤニヤと笑いそう聞く沖田は、私の答えなど解っている。それでも問うということは私に言わせたいのだ。結婚したいと。

上等だ、言ってやろうじゃないか。私が照れるのを期待してるのだろうが、そう人生簡単にいかないと思い知らせてやる。

照れたら私の負け、ちゃんと言えたら私の勝ち(多分)。2年ぶりの勝負といこうじゃないか。










勝敗の行方
(なんでコイツ照れないアルか!)
(やべ、超可愛い…)










*****
神楽ちゃんが何て言ったのかは浮かばn((
沖田くんの反応を見てご想像にお任せします←

最初が書きたかっただけで後半がgdgd
…反省してます。


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