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□長編
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次の日学校に行けば、珍しく時間より早く銀八が教室にいた。
どうやら、あの脱走劇にずいぶんとご立腹のようで、チャイナも来たところで原稿用紙を渡され、反省文を書け、と言われた。
今日は職員室には行かず、椅子に座り教卓に足を置いて、うちわ片手に俺らを監視。昨日のことと、この暑さにイライラしている銀八を前に、さすがに逃げることは出来ず最後まで書き終えた。
それから今日で2日目になる。
ちなみに昨日は国語準備室の掃除(は反省文を書いたにも関わらず途中放棄)、今日は天気の都合で昨日の続き、ではなくプール清掃。
このまま行けば、夏休み中に校内は俺らが全て掃除することになりそうな勢いだ。
なのに何故あのクソアマ掃除しない。
「オイ、チャイナもやれ」
「日がガンガン照ってんのが見えねーのかヨ。お前の目は節穴か」
「テメーの目が節穴か!!ガンガンどころか雨でも降ってきそうじゃねーかよ!!」
柄にもなく大声でツッコミをしてしまうのも仕方ないと思う。
鉛色の空、こんな分厚い雲に覆われているのに、どこに太陽が出るというのか。そもそも、天気が良いなら銀八がチャイナにプール掃除なんてさせる訳ない。
「マジ水かけるぞコラ」
「レディに向かって何しようとしてるアルか死ねヨ」
「テメーが死ね」
悲しいことに、コイツに何かを言われても、反射的に言い返すようになっていた。
好きな娘に素直になれないなんて俺は小学生か。
なんて思うが、コイツがこんな性格じゃなければ、俺だって少し素直になれるというのに。現に俺は姐さんにだって他のクラスの女にだって(自称)優しく接している。
「なぁ、お前明日も来んの?」
コイツが来ないなら俺は毎回(てか毎日)補習に来ている意味がない。こんなんだと、その内来なくなるのではないかと思い聞くと、俺が来んなら、なんて言うから少し期待してしまった。でも勘違いすんなナルシストと言われムカついたのでホースを向けた。そしたらデッキブラシが飛んできた。
何がレディだ。ふざけんな。
レディはデッキブラシなんか投げねーよ。
「すみませんネ。手が滑っちゃたアル」
「あ、やべ。足が滑った」
そう言いながら、足下に飛んできたデッキブラシをチャイナ目掛けて蹴り上げる。
それを避けたチャイナは今度はデッキブラシ×2を飛ばしてきた。またそれを俺が投げ返し、そしたらチャイナもやり返し…
そんなことを続けているとついには雨が降ってきた。
「あ、ヤバいネ。雨降ってきたアル」
「じゃあ帰ろうぜィ」
「そーだナ」
帰ろうとデッキブラシその他もろもろを片付けていると、銀八の登場。
「お前ら何やってんの!?やってないと思ったけどね!先生そう思ったけどね!!もうやんないなら明日からくんな!!」
その代わり、休み明けからお前ら俺の雑用係やれよ、と良い残して銀八は去っていった。
「これで補習と言う名の掃除から解放されますねィ」
「やっと夏休みをエンジョイできるアル!」
と、その時は俺もチャイナも、夏休み明け、銀八に散々こき使われることをまだ知らなかったので大はしゃぎだった。
後悔するのは当分先のことである。
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沖田ならデッキブラシを蹴り上げるのくらい
簡単にできてしまうと思う!
運動神経なら人並みはずれている。学年一という決めつけ←