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□長編
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昨日の帰り、チャイナに荻原しおんはどんな人なのかと聞かれた。さすがに姐さんには聞けなかったのだろう。答えない理由はない。だから性格とか、色々と話した。




「どうすんだ総悟?」


「どうすんだってそんなの…」


「沖田ァ!銀ちゃんがお呼びアル!」




なんてタイミングだ。

雑用係に就任してからチャイナといることが多くなり、喧嘩することが少なくなった。喧嘩をすれば、周りに危害が加わり自分たちで片付ける手間がかかる上、いつ説教を受けるか分かったもんじゃない。




「今行きまさァ」




そう言って立ち上がった瞬間、名前を呼ばれた。名字ではなく下の名前だ。呼んだのは近藤さんでも土方さんでもなく、さっきまで話に出ていた荻原しおん。こっちもなんてタイミングだ。




「いたいた!ちょっと来てほしいんだけど」


「俺今銀八に呼ばれて「すぐ終わるから!」


「今行くっつったから無理でさァ」


「あーそか、ごめんねー」




神楽ちゃんもごめんねと言い去っていった。

勝手に現れ勝手に去っていく、そんな勝手な女が荻田しおん。
そして悪いとか悪くないとか関係なくとりあえず謝る。仕事でやっている癖だと思うが、姐さんが嫌いなのはきっとそういう性格や、一度だけ見せたことのある本性。チャイナや柳生のように誰にでも素を出せる性格の方があっているのだろう。




「荻原さんほっといて良かったアルか?」


「こっちが優先だからねィ」




なんてことを言ったが、一番はチャイナが優先。

呼ばれたのがチャイナなら間違いなく雑用係、部活、その他のこと全ても放り出してそっちに行く。

…そんなことは言えないけど。




今日の仕事は提出されたノートの確認。そんなこと教科係にやらせろ、と思ったが、3Zでは係なんて決めていない。だから学級委員である桂が同じく学級委員である姐さんにやれと言われて色々な係の仕事をやっているのだ。

しかし今回は雑用係の仕事。2人は名簿にチェックをいれ、整理して並べ終えた。




「よし、終わったアル」


「昼休み返上でよくやったお前ら!」


「で、先生はジャンプを読みつつチョコかじってましたよねィ?」


「マジデカ!?」



銀ちゃんズルいヨ! と言っているチャイナはどうやら気づいてなかったらしい。

銀八は気づかれないようにジャンプで隠して食べていたが、それが逆に怪しかったからすぐに気付いた。でもチョコを催促するチャイナにバレなければ、俺にバレたってかまわなかったのだろう。

自分だけ良い思いしようなんざ、神様仏様が許しても俺は許さねぇ。整理意外と大変だったし。

チャイナは未だ銀八のチョコを追っかけている。




「もう諦めろ!ほら、あっちにクッキーあるし」


「今はチョコが食べたいネ」


「じゃあ沖田くんに買って貰いなさい!」


「えーコイツにアルかァ?」




えーとは何だと思ったが、俺だって嫌だ。チャイナの為でもあるが、結果的に得をするのは、チョコを取られなかった銀八と、俺にチョコを買ってもらったチャイナの2人だ。俺は一文の得にもならない。むしろ損をすることになる。




「だって俺の食べかけだし、買って貰った方がいいと思うけど?ねぇ沖田くん?」




食べかけと言う言葉に体がピクリと反応した。つまりチャイナは銀八と間接キスをすることになる。

銀八の野郎ニヤニヤしやがって。何がねぇ沖田くんだ。ムカつくことこの上ない。しかもチャイナと内緒話見せつけるし、呪い殺してやろうか。やっぱり昨日、呪うべきだった。




「沖田チョコ買えヨ」


「神楽ァ、ちゃんと頼み方教えてやっただろ?」


「む、無理アル!」




じゃあ沖田くんは買ってくれないなー、と銀八が言うと覚悟を決めたのか、チャイナは綺麗な青い目を真っ直ぐと向け、俺のそれをとらえる。急にそんな目で見られるとさすがにビビり少しひるんだ。




「…何でィ」


「そ、」


「そ?」


「そ、そんなこと出来るかヨ馬鹿!」




銀ちゃんのマダオ!天パ!糖尿病こじらせて死ね!といってそそくさと教室を出て行ってしまった。
少なからず傷心しているであろう銀八に一体何を言ったのかと尋ねようとしたが、丁度チャイムが鳴り、帰って良いと言われたので諦めた。まぁ言われなくても帰るけど。




「じゃあ糖尿病こじらせて死んでくだせェ」


「うるせーよ!さっさと帰れよ!てか先生まだ糖尿病じゃないからね!聞いてる?沖田くん聞いてる?」




銀八がそう言っているが、イヤホンをセッティングした俺には聞こえない。だから俺に話しかけても無駄ですぜ先生?




「心の声喋ってるよコイツ!!テメー聞こえててわざと無視してんだろ!?」




ごちゃごちゃとうるさい銀八の言葉を無視し続け、教室を出た。眠いしなんか疲れたから次の授業サボろ。そう思って屋上へ向かう階段を上がった。




「うわ、」




重たい扉を開けると、一気に風が吹きあがる。外はチャイナの目より薄い青で晴れ渡っている。

こんなに日が照っているならチャイナはここでサボらないか。


軽く舌打ちをしだが、かと言って階段を下がっていくのも面倒なので、そのまま屋上に寝そべり空を仰いだ。










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長編の更新が今までにないくらい久しぶりですた。


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