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□長編
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コンビニから沖田んちまでは徒歩5分。そして私んちまでも徒歩で5分くらい。つまり沖田とはかなり家が近い、と言うわけでもない。だけど徒歩5分くらい。




「私もミツバさんみたいな兄姉が欲しかったアル。うちの兄貴は全然帰ってこないし、帰ってきたかと思ったら滅茶苦茶ケガしてるし…」


「それならうちとそう変わらないわ」




まさか、そんなはずがない。沖田んちが、うちとかわらないなんて。気づくとそれが声に出ていた。




「そんなはずないネ!」




だってミツバさんは優しくて弟思い、それに沖田だってミツバさんが大好きなんだから。うちの兄姉環境とは訳が違う。しかしミツバさんはうちのバカ兄貴よりも家にいないと言った。
理由が全くわからない。家に帰らない不良なお姉さんだなんて沖田は一言も言ってなかった。現におしとやかで優しいお姉さんに会っているし。
だからうちとは全然違う環境なのだと勝手に思っていた。そんな考えを巡らせていることに気付いたのか、ミツバさんは話を続けた。




「私、病弱だから病院に籠もりっきりなの。今みたいに調子が良いときも迷惑かけっぱなしだし…だから総ちゃんには感謝してるのよ」




そんな事実を知り、そうだったアルかと返すのを、第三者の言葉に遮られた。
酢昆布のストックは切れるし、会いたくないときに限って沖田には会うし、ミツバさんに会ったことを除くと、今日は人生最大の厄日だ。




「ミツバさん!!…それと…神楽ちゃん?」




なんでアナタがミツバさんと居るのかとでも言いたいのだろうが、顔にはきっちり笑顔を張り付けている。こんなことに気付くのは喜びも殺意も笑顔の兄を持つ私と、その兄によく振り回されている阿伏兎って人くらい。
彼女のこのような行動、笑顔で語られるということは今日が初めてではなく何度かあった。私は兄と重なるこの行為、もとい彼女自身が苦手だ。




「どーもアル、荻原さん」


「しおんちゃん?久しぶりね」


「やっぱりミツバさんだったんですかー!いつ退院したんですか?今は総悟と生活してんですか?」




どうやら顔見知りのようで、話に花を咲かせている。私はこのまま空気化するのかと思ったが、たまに私に話をふったりして、私を忘れないでいてくれるミツバさんに感心する。
本当にあの鬼畜系ドS男子と同じ環境で育ってきたのだろうか。




「嬉しいんです。また総悟と居られて…」


「しおんちゃん、」


「やっぱり好きなんですよ」




じゃあ友達が待ってるんで行きますねと言う言葉と、嫌らしい笑顔を残して去っていった。




「荻原さんは、沖田のこと…」




だったら私は知らない間に荻原さんの邪魔をしてしまったかもしれない。荻原さんに誤解されてるかもしれない。
だけどそれは私がそう思いたいだけであって、決して「かもしれない」なんかじゃない。あの顔は絶対私に敵意を持っていた。




「これはヤバいアル」


「どうしたの?」


「私、荻原さんに誤解されてるネ」




そう言うとミツバさんは、しおんちゃんが誤解だなんて珍しいわと頭にクエスチョンマークを浮かべた。




「それって誤解なのかしら?」


「どういうことアルか?」




彼女、洞察力は人並み以上だから、誤解なんてするような子じゃないのに。と不思議そうに言った。




「ミツバさん、」


「あ、ごめんなさい。神楽ちゃんがどうとか、」


「ち、違うネ!家着いたアル」


「あら本当。ありがとう神楽ちゃん」




それからミツバさんを玄関まで送り、考えた。

私にとって沖田は何なのか、と。
4月に留学してきたときは確かに嫌いだった。いや、嫌いなんてレベルじゃなくて死ねと思ってた。でも体育祭のときに初めて普通に話したし、補修は沖田が居て楽しかった。そして休み明け、荻原さんが転入してきて、沖田は彼女のことをいろいろ知ってて、ちょっと気にくわなかった。


これが「好き」ということなのか。
でも銀ちゃんだって、新八だって、姉御だって、みんな好きだ。恋愛の経験値が0に等しい私には難しすぎる。




とりあえず明日か明後日あたり姉御に相談しようと決め、家路についた。




*****
もうちょいで神楽ちゃん自覚!!
っと思ってから何ヶ月たってんだろ^p^


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