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□長編
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昨日は保健室でサボって正解だった。ツッキーに銀ちゃんに酷いこと言っちゃったこと話して相談にのってもらったし、それに沖田は屋上で授業をサボってたと思うから。
本当に今日が学校が休みの土曜日で良かった。そもそも銀ちゃんがあんなこと言ったのがいけないんだ。
"総悟、チョコ買って"……そんなこと言うなんて絶対無理に決まっている。アイツを名前呼びするなんて……
…するなんて、何だ?
今、恐ろしい単語が頭をよぎった。いやいやいや、有り得ないアルそんなこと!!
パンク寸前の思考回路を強制的にシャットダウンさせた。沖田のことを考えて土曜日を台無しにするなんて馬鹿げている。
「あ、酢昆布切れてるネ…」
仕方ないか、買いに行こう。と重い腰を上げ外へでた。このことを後悔するのはもう少し経ってから。
「…以上でお支払い、2740円になります」
近くのコンビニに行き、酢昆布と今日のお昼を買った。きっと店員さんには"毎日酢昆布を買って、たまに肉まん3つ買ってく美少女"でインプットされているはずだ。
自動ドアを抜け、横断歩道を渡ったところで沖田に会った。会いたくないときに限って会うものだから神様は私を嫌っているに違いない。しかも隣にはキレイな女の人を連れているというオプション付きだ。でも動揺はしない。たぶん沖田の隣にいるのはお姉さん。会ったことはないけど髪色も顔立ちもそっくりだから。話に聞いた通りにキレイ。別にアイツの隣がお姉さんじゃなくても動揺しないけど。
「そちらの方は、お姉さんアルか?」
「総ちゃんのお友達?」
「はい、同じ係なんです」
とか弟さん言ってますけど雑用係なんですお姉さん、友達って言っても喧嘩友達なんですお姉さん。
でも嘘は言っていない。沖田がお姉さんには嘘ついたことないっていってたのをなんとなく理解し、そして信じた。
コイツは本当に姉思いなんだな。私もこんな出来る姉が欲しい。……別に変な意味とかじゃなくて純粋に。兄貴があんなだからって意味で。
「あら総ちゃん、もうすぐ部活の時間だわ」
「え、あ、本当ですね。じゃあ近藤さんが学校で待ってると思うんで行ってきます」
「気をつけてくのよ」
「はい、お姉ちゃんも気をつけて帰ってください」
姉の前では部活もサボらない素直でいい子に成り上がった沖田は隣を通り過ぎ際、後は頼んだ、と言って去っていった。目の前にお姉さんが居るのでふざけんなと叫ぶこともできず仕方なく頼まれた。だけど私は頼んだなんて言われなくても、送っていたと思う。
「家まで送りますヨ」
「ありがとう、」
そう言って、神楽ちゃんは優しいのね、と笑った。
あれ?なんで私の名前知ってんの?あ、神楽ですって言ったからか。あれ?言ったっけ?自己紹介したっけ?
「ごめんなさい。神楽ちゃんじゃなかったかしら?」
申し訳なさそうに謝るお姉さんに、神楽であっていると伝え、私も謝り、どこかで会ったことがあるのかと尋ねた。驚いた顔をしてから、初めて会ったのだから謝らないで、とお姉さんは優しく言い言葉を繋げた。
「総ちゃんがね、よく話してくれたのよ。留学生の神楽ちゃんのこと」
「それで分かったアルか?」
「えぇ、髪も口調もその眼鏡も総ちゃんの言うとおりなんですもの」
よく考えればそれもそうだ。ピンクの髪に異国の髪飾り、アルアル口調に加えて瓶底眼鏡、間違える方が難しいに決まっている。
もしかして、あのコンビニで働いていたことがあるのだろうか、という推測は大きな間違えだった。
「私もお姉さんのこと聞いてるアル。沖田ミツバさんですヨネ?」
キレイで優しくておしとやかで、沖田自慢のお姉さん、そう言うとお姉さんはキレイに笑ってから、言葉を発す。
「お姉さん、だなんてよそよそしいわ。私ともお友達になってくれないかしら?」
「いいアルか!?」
「もちろん」
「よろしくお願いします、アル」
ニカっと笑ってミツバさんと握手する。それから沖田の家へ向かって歩き出した。
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神楽ちゃんの敬語がよくわかんないorz