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□長編
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「…と、言うことアル」
月曜日、珍しく朝早く学校に来たら、沖田や荻原さんは居らず、姉御は居たので一昨日のことを話した。そしたらちょっと嬉しそうに笑ってから話し始めた。
「それって沖田さんが好きってことかしら?」
「わからないアル」
そう言うと、もし私が沖田さんを好きって言ったら、神楽ちゃんはどうする?と聞いてきたけど、姉御は沖田が好きではないのだからあまりピンとこない。だから例を変えて欲しいと言うと、例えばではないけどと話を続けた。
「荻原さんのことどう思う?」
「あんまり好きじゃないアル」
それは彼女が兄貴と同じ作り笑顔だから。性格が悪いから。向こうが私を嫌いだから。ミツバさんと親しい関係っぽかったから…
様々な理由が頭をよぎったが、それに嘘偽りはないので全部姉御に話した。するとその多さに驚いたのか、最初は目を見開いて聞いていたが、だんだんと何かを考え出した。
「神楽ちゃん、自分で言ってて気付かなかった?」
「何をアルか?」
「沖田さん関連のことが多いこと」
ミツバさんと仲良しなのは嫌だとか、言い合いや係の仕事をしているとなんで沖田と一緒にいるのかとでも言いたそうな顔で見てくるだとか、確かに他よりは少し多い気もする。
「確かに…」
「お妙さ〜ん!!」
「これは私がどうこう言う問題じゃないし、もうすぐ沖田さんも来るから話はこれで終わりね」
「おはようございま〜す!!!」
ガラガラと扉を開ける音の直後、姉御の怒鳴り声と鈍い音、その後にはぁ、とため息が聞こえた。毎日毎日こんな事が起これば慣れてきて反応も薄くなる。
「姐さん、もうちと手加減してくれやせんかね?それか土方さんが殴られ役になりたいと言ってるんで変わりに殴ってやってくだせェ」
「ほう、そりゃあ初耳だ」
「すいません、私、土方さんの性癖に付き合ってる暇なんてないんですよ」
「そんな性癖もってないからね!!総悟テメーふざけんなよ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐトッシーから逃げる沖田。やっぱり分からない。好きだとか嫌いだとかそういうのが。
「うーん…」
「どうかしたの?」
聞こえてきた声に危うくげっ、と発しそうになった。あぶないあぶない。そんなことを言ったら今までの大人な対応が台無しになるところだった。
「オハヨー荻原さん」
「おはよー。だいぶ悩んでたみたいだけど?」
まさか、沖田のことが好きかよく分からなくて…なんて彼女の前で言える度胸はない。
「姉御に相談したし、大したことないから大丈夫アル!」
「なんかあったら私にも相談してね!」
「へぇー、チャイナが悩み…」
「げっ」
にこりと笑って返答したのに第三者の登場のせいで笑顔一瞬にしては消えた。こっちはげっ、と発しても何ら問題はない。むしろ発して正解だ。
「げっ、とは失礼なやつでィ」
「勝手に人の話聞いてる方が失礼アル」
「にしても怪力酢昆布女に悩みねィ」
明日は槍でも降ってくるのではないか、と鼻で笑われた。私だって悩みの一つや二つくらいあるわ。しかも沖田のことで悩んでるっていうのに。悩みの種の分際でひどいことを言うものだ。
「もうお前あっち行けヨ」
「でも俺悩んでる神楽サンほっとけない」
ニヤリと笑う沖田が憎たらしい。ほっとけないって言うより悩んでる私を見て楽しんでんダロこの腐れサド。ムカついたからちょっとからかってやろうと思った。
「何アルかお前、私が好きアルか?」
「そうでィ」
「「…は?」」
予想外の答えに二人の声が重なった。1人は私、そしてもう1人は荻原しおん。そういえば荻原さんも居たんだっけ。軽い気持ちで言うんじゃなかった、なんて今更思ってももう遅い。
「驚きすぎだろ」
「総悟、本気?」
「冗談に決まってるネ。コイツはそういう男アル」
本気とか冗談とか、聞きたくなくてそう答えた。沖田は何も答えずにゴリとトッシーの所へ行ってしまった。
「ねぇ神楽ちゃん、話があるの」
だから今日は一緒に帰ろう、といつもの甲高い声とは違う低い声で言った。
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荻原さんの本性を早く書きたい…