.

□長編
17ページ/18ページ




今は放課後。そして私と沖田は日直であった。なぜコイツと日直なんかしなくてはいけないのだ、出席番号が前後とか名字変えろよ渡辺とかに。と思いながらも私はジャンケンで負けたため日誌を書いている。




「俺は一生沖田で生きてくからさっさと書け」


「うっさいアル!今日何があったか考えてんダロ!!」




ナレーションしてたくせに、と沖田が呟いたのは聞こえなかったことにし、今日の出来事を思い出す。

しかし何も思いつかない。よく考えればそれもそのはず、1時限目は授業モードになんか入っていなかったし、2時限目は銀ちゃんがジャンプについて語っただけ、3時限目の体育は開始5分で保健室でやる気を無くし、4時限目を屋上でサボったら、お昼も忘れ爆睡。そして起きたのが今さっきときた。だから書けることなんて一つもない。




「書くことがないネ…」


「じゃあどーすんでィ」


「んなこと知らねーヨ!!」


「俺だって知らねーよ!自分でどーにかしろ」




なんて非協力的な日直だ。そう思ったが、コイツもサボり魔だから、書けることなんかないのだろう。

だから日誌には一言、ごめんなさいと書いて提出することにした。




「よし!」


「じゃあ帰りますかィ」


「神楽ちゃーん!日誌書き終わった?」


「あ、今終わったとこアル」




荻原さんと帰る約束をすっかり忘れていた。彼女が来なかったらいつもの流れで沖田と帰っていただろう。




「またね総悟!」


「ん?沖田は帰らないアルか?」


「え、俺ァ近藤さんと帰るんで」




そういえば、トッシーがもうすぐ大会だから部活に出ろとか言ってたっけ?アイツがトッシーの言うことを聞くなんて、それほど大切な大会なのだろう。

精々頑張れヨ!と言ってから荻原さんと教室を出た。










「…神楽ちゃんは私の話したいこと、何か気にならないの?」




学校を出てしばらく歩くと荻原さんがそう聞いてきた。そりゃあ気になる。荻原さんは私のことが嫌いなのだから。

でもおおよその予想はできている。周りに人の気配はなし。沖田に近づくなとか、沖田の何なのとか、そういった類のものなのだろう。彼女は沖田が好きなわけだし。




「別に話したいときに話してくれればいいネ」




予想がついていることを、わざわざ聞くのは面倒くさい。だからそう答えた。すると荻原さんは、神楽ちゃんはいいよね。と話を始めた。




「どこがネ?」


「そういうところが。バカで単純で純粋そうな顔して…そうやって総悟も惑わせてんでしょ?」


「ちょ、何アルか」




彼女とに一緒に帰ろうと言われた時からこういう展開になるのだろうということは分かっていたが、さすがにムカついた。沖田を好きな人って、こんなんばっかりだから嫌なんだ。私はこんな人達と同じにされたくない。




「そのままじゃない。私も総悟が好きって知ってんのに日直とか係とかで仲良さそうにして。」


「それは銀ちゃ「言い訳とか聞いてないの」




どうやら話を聞く気もないようだ。しかし日直は出席番号順、係は補修サボりの罰で私が意図的に仕組んだものではない。

それになぜ私も沖田が好きな前提で話が進んでいるのか。




「荻原さん、私と沖田は喧嘩友達みたいなものアルヨ?」


「え…そうなの?」




なーんだ。なんか誤解してたみたい、ごめんね。といつもの笑顔と声のトーンに戻り、じゃあさ、と話を進めた。

はぁ、これだからB型の女は…。




「ただの喧嘩友達なら総悟に近づかないで」


「それは無理アル!」


「どうしてよ?」




どうして?だなんて、そんなこと沖田が好きだからに決まっているではないか。そう思いやっと沖田への感情へ気づいた。沖田は銀ちゃんとも姉御とも違う、ライクではなくラブの方の「好き」だということに。




「私は沖田が好き…」




自分自身の心に向け呟いた言葉は、すぐ隣の彼女の耳にも届いていた。当然のごとく聞き返した彼女に、今度はハッキリと沖田が好きだと伝えると、素の自分に戻ったのか、先ほどより低い声になった。




「なにそれ。喧嘩友達から恋人になろうってんの?」




さすが志村妙の友達ね、と言われた瞬間に、パシンと乾いた音が響いた。手のひらがジンジン痛み、それから私が彼女の頬を叩いたのだと気付く。女の子にビンタされたことはともかく、したのは初めてだった。

あちらも叩かれたと気づくのに時間がかかったようで、しばらくしてから私をギロリと睨みつけた。




「手ぇ出すなんて何考えてんの」


「姉御をバカにするからネ」


「何?もしかして自分が総悟と釣り合うとか思ってんの?」




女だと思われてもないくせに?と吐き捨てられたセリフが心に突き刺さった。

家まではもうすぐそこなのでこれ以上話を広げないようしたのに、彼女はそういえば、と話し始める。

これだからB型の女は…。




「今日から此処に住むことになったの。ちなみに203号室」


「え?うちも此処アル」


「知ってるよ」




知っているならわざとなのか。私はこのマンションの204号室に住んでいる。つまり今日からは彼女とお隣さんになるわけだ。




「言っとくけどアンタが隣って知ってたら引っ越さなかったから」




心底私が嫌いなようで、これから大変になりそうだ。と思いながら、一応お隣さんの彼女にさよならを言い、玄関の扉を閉めた。










*****
荻原さんの性格イメージはエロメスちゃんです。
それからB型ではありません←


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ