君だけの妹
□ベルトコンベアーには気をつけよう
2ページ/7ページ
「あぁ!副長ずるいですよ!!」
「兄だからって…俺達がその役回りやりたかったのに!!」
「下心丸出しだな!?テメーらは近藤さんの介抱でもしてろ!」
他の隊士に命令を下すと、お兄ちゃんはあたしの手を引いたまま部屋に連れて来てくれた。
「俺はまだすることがあるからな。桜は先に寝てろ」
「うん…。お兄ちゃんは仕事?」
「まぁな」
そう言ってお兄ちゃんは煙草を吸い始めた。
「・・・あ」
お兄ちゃんの近くに蚊が……
パチンΣという音が辺りに響いた。
「なんだ?最近やたら蚊が多いな…」
「そうだね…」
屯所は男の人が多いから私はあまり刺されないけどね。
その時、静かになった部屋の近くから不気味な声と音が聞こえてきた。
「死ね…」「死ねよ土方…」
「・・・え?」
な…何?このカーンカーンって音・・・。
「ま…まさか本当に…?」
「・・・;;」
こ…怖い…けど、なんか聞いたことのあるような声のような気がする…?
「桜はそこで大人しくしてろよ」
「う…うん…」
そしてお兄ちゃんはゆっくりと襖を開けた。
その目に見えたのは―……
「っ!!」
「死――……。」
総悟発見。
あれ?あの白い着物着てるのって総悟だよね?あのロウソク頭に巻いてるの総悟だよね。
総悟はお兄ちゃんに見つかると同時に手を後ろに隠していた。
「…何してんだテメェ、こんな時間に…」
「ジョ…ジョギング」
「嘘つくんじゃねえ!!んな格好で走ったら頭火だるまにならぁ!!」
「………あ」
気のせいかな?総悟が持ってるもの…、アレ藁人形に見えたんだけど。
「儀式だろ。俺を抹殺する儀式を開いていただろ!」
「お、お兄ちゃん;そう判断するのは早いよ…」
「そうでさァ。そんな自意識過剰だとノイローゼになりやすぜ?」
「なにを……っ!?」
突然お兄ちゃんが言葉を止めた。
「・・・お兄ちゃん?」
「どうしたんでィ、土方さん」
お兄ちゃんが固まってる方を見てみたけど、特に何も見えない。
「総悟…桜、今あそこに見えなかったか?」
「いいえ、何も?」
「私も見えなかったよ?」
「・・・」
私達がそう答えると、お兄ちゃんは黙ってしまった。
え…な、なに?まさか幽霊でも見えた…とか?
「そういや桜は何で土方さんの部屋に?」
「あ…一緒に寝てもらおうと思って…」
「一緒に寝る…ねィ。とうとう近親相姦にはしりやしたか」
「・・・」
総悟のからかいにもお兄ちゃんは答えなかった。
そのせいか、総悟はちょっと不機嫌そうに顔をしかめた。
その時だった。
「ギャアアアアアアア!!」
「「っ!!」」
「キャア!?」
え・・・な、何?今の声……。
「総悟!」
「へい!!」
「あ・・・待って!」
お兄ちゃんと総悟が駆け出したので、私も急いで後をついていった。
声のほうに駆けつけてみると、そこにいたのは…倒れている隊士だった。
「おい!しっかりしろ!!」
「だ、大丈夫ですか?!」
「…気を失ってるだけみたいですねェ」
総悟は焼けないようにロウソクを捨てたらしい。
「……あれ?」
なんか首の所に赤い跡みたいのがあるような…?
「桜、今日はとりあえず寝ろ。そいつは俺が運んでおくから」
「え・・・あ、うん…」
「土方さんの代わりに俺が添い寝してあげやしょうか?」
総悟がお兄ちゃんの方を見てにやりと笑う。
「駄目に決まってんだろうが!テメーもとっとと寝ろ!!」
「チッ…冗談の通じねェ奴でィ」
お兄ちゃんは総悟を睨んで、そのまま隊士の人を運んでいった。
「・・・」
今思えばこれが始まりだったんだ。
あの悪夢のような日々の―――…始まりだったんだ。