君だけの妹

□ベルトコンベアーには気をつけよう
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あぁ!副長ずるいですよ!!」

「兄だからって…俺達がその役回りやりたかったのに!!」

下心丸出しだな!?テメーらは近藤さんの介抱でもしてろ!」


他の隊士に命令を下すと、お兄ちゃんはあたしの手を引いたまま部屋に連れて来てくれた。


「俺はまだすることがあるからな。桜は先に寝てろ」


「うん…。お兄ちゃんは仕事?」


「まぁな」


そう言ってお兄ちゃんは煙草を吸い始めた。


「・・・あ」


お兄ちゃんの近くに蚊が……


パチンΣという音が辺りに響いた。


「なんだ?最近やたら蚊が多いな…」


「そうだね…」


屯所は男の人が多いから私はあまり刺されないけどね。


その時、静かになった部屋の近くから不気味な声と音が聞こえてきた。


「死ね…」「死ねよ土方…」


「・・・え?」


な…何?このカーンカーンって音・・・。


「ま…まさか本当に…?」


「・・・;;」


こ…怖い…けど、なんか聞いたことのあるような声のような気がする…?


「桜はそこで大人しくしてろよ」


「う…うん…」


そしてお兄ちゃんはゆっくりと襖を開けた。

その目に見えたのは―……


「っ!!」


「死――……。」


総悟発見。


あれ?あの白い着物着てるのって総悟だよね?あのロウソク頭に巻いてるの総悟だよね。


総悟はお兄ちゃんに見つかると同時に手を後ろに隠していた。


「…何してんだテメェ、こんな時間に…」


「ジョ…ジョギング」


嘘つくんじゃねえ!!んな格好で走ったら頭火だるまにならぁ!!」


「………あ」


気のせいかな?総悟が持ってるもの…、アレ藁人形に見えたんだけど。


「儀式だろ。俺を抹殺する儀式を開いていただろ!」


「お、お兄ちゃん;そう判断するのは早いよ…」


「そうでさァ。そんな自意識過剰だとノイローゼになりやすぜ?」


「なにを……っ!?」


突然お兄ちゃんが言葉を止めた。


「・・・お兄ちゃん?」


「どうしたんでィ、土方さん」


お兄ちゃんが固まってる方を見てみたけど、特に何も見えない。


「総悟…桜、今あそこに見えなかったか?」


「いいえ、何も?」


「私も見えなかったよ?」


「・・・」


私達がそう答えると、お兄ちゃんは黙ってしまった。


え…な、なに?まさか幽霊でも見えた…とか?


「そういや桜は何で土方さんの部屋に?」


「あ…一緒に寝てもらおうと思って…」


「一緒に寝る…ねィ。とうとう近親相姦にはしりやしたか」


「・・・」


総悟のからかいにもお兄ちゃんは答えなかった。

そのせいか、総悟はちょっと不機嫌そうに顔をしかめた。

その時だった。

「ギャアアアアアアア!!」


「「っ!!」」


「キャア!?」


え・・・な、何?今の声……。


「総悟!」


「へい!!」


「あ・・・待って!」


お兄ちゃんと総悟が駆け出したので、私も急いで後をついていった。

声のほうに駆けつけてみると、そこにいたのは…倒れている隊士だった。


「おい!しっかりしろ!!」


「だ、大丈夫ですか?!」


「…気を失ってるだけみたいですねェ」


総悟は焼けないようにロウソクを捨てたらしい。


「……あれ?」


なんか首の所に赤い跡みたいのがあるような…?


「桜、今日はとりあえず寝ろ。そいつは俺が運んでおくから」


「え・・・あ、うん…」


「土方さんの代わりに俺が添い寝してあげやしょうか?」


総悟がお兄ちゃんの方を見てにやりと笑う。


「駄目に決まってんだろうが!テメーもとっとと寝ろ!!」


「チッ…冗談の通じねェ奴でィ」


お兄ちゃんは総悟を睨んで、そのまま隊士の人を運んでいった。


「・・・」


今思えばこれが始まりだったんだ。

あの悪夢のような日々の―――…始まりだったんだ。
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